二日酔いの原因と二日酔いにならない飲酒方法

二日酔いのいろいろな症状がどうしておこってくるのかについては、アルコールの代謝過程について説明が必要です。胃のなかにはいったアルコールは、30分ぐらいで約3割が胃から吸収され、胃内で乳び状になった残りが小腸から吸収されます。
小腸で吸収され血液中へ移ったアルコールの濃度は、お酒を飲んだあと60分~90分でピークに達します。

血液中のアルコールは、肝臓のアルコール脱水素酵素(ADH)によって分解され、まず、アセトアルデヒドになります。中間代謝産物であるこのアセトアルデヒドは、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によさくさんって分解されて酢酸になり、ついには炭酸ガスと水にまで分解されて尿として排泄されますが、この分解・排泄過程が全部終わるまでにはかなりの時間を要するのです。

アルコールの代謝経路

アセトアルデヒドが血液中にいつまでも残ると二日酔いになります。日本人にはALDHの活性の低い人が多く、悪酔いしやすい人が多いのです。

アルコールの代謝経路
アルコールの代謝経路

上図は、アルコールの代謝系路を示したものです。体内にはいったアルコールは、約80% がこの経路で分解されています。

2つの酵素、とくにアセトアルデヒド脱水素酵素のはたらきが悪いと、血液中にアルコール分や有害なアセトアルデヒドがいつまでも残ることになるので、悪酔いをおこしてきます。
中間代謝物質であるアセトアおしんルデヒドは、それ自体で悪心、嘔吐、呼吸促柏、心悸亢進をおこすなど、アルコールより数倍も強小生体反応をおこす有害物質なのです。
現在、アルコール依存症の方の治療に用いられている、酒の飲めなくなる薬(抗酒剤)は、おもにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)のはたらきをブロックする薬理作用をもっています。

少量の酒ですぐ顔が真っ赤になる人(フラッシングタイプ) は日本国内に47% もいます。このタイプのほとんどいない白人や黒人にくらべてとりわけ多い数字です。
これは、日本人にはALDH の活性の低いD型と、活性の高いN型の遺伝子とがまじりあって存在するからです。

日本人のなかには、N型同士の両親から生まれた酒の強いNN型が約5割、D型とN型の組み合わせの酒の弱いND型が4割いて、残りの1割はまったく酒の飲めないDD型とされています。
このDD型の遺伝子のもち主は、たえず抗酒剤をのまされつづけているようなものです。つまり、中間代謝産物であるアセトアルデヒドをいつまでも分解できないので、すこしのお酒で顔はすぐ真っ赤になり、心臓はどきどきし、頭が痛くなり、気分が悪くなって、ついには吐くことになるのです。

このように中間代謝物質アセトアルデヒドのおこす症状が二日酔いの状態にひじょぅによく似ているので、この物質が二日酔いの原因物質と考えられてきました。
大学教授で医学生に清酒5合を飲ませたあと、血液中のアルコールとアセトアルデヒドの濃度を時間を追って測定する実験を行っています。

日本酒5合を飲んだあとの血液中のアルコールとアセトアルデヒドの濃度の時間による変化

清酒5合とは、健康な成人男子の最大処理能力をすこしこえた量で、いっぱんに1日5合以上の酒量をもつ人を大量飲酒者として分類しています。

さて、この医学生の血液中のアルコール濃度は、上図のようにお酒を飲んで90分でピータに達し、その後しだいに下がっています。

これにたいして、血液中のアセトアルデヒド値は、なだらかに上昇して5時間後に最高値に達しています。このアセトアルデヒド値の上昇にともなって、たしかに悪心、嘔吐、頭痛など悪酔いの症状がおこってきます。

二日酔いとは翌朝まで血液中にアルコールやアセトアルデヒドが残っている状態のことですから、清酒5合という大量の酒を飲んで翌朝さわやかな気分で目覚めるためには、この図によれば、遅くとも21時ごろまでには飲み終えて、ふだんの時間に就寝しなければならない計算となります。

しかし、じつさいには22時から午前25時まで飲酒したというようなケースが多いのですから、翌朝の出社時や登校時には相当量のアルコールが血液中に残っていることになります。それが完全に体内から排泄されて、やっと気分がよくなるのには少なくとも3時間はかかるでしょう。

もっとも、飲酒量が少なくなれば、お酒の処理に要する時間もとうぜん短くなります。したがって、翌朝の血液中の濃度をゼロにしてすっきり目覚めるためには、最大許容量で清酒なら3合まで、ビールなら3本弱、ウィスキーならグラス7杯までで、それも遅くとも前夜の23までに切りあげる必要があるでしょう。

俗に、糖分の多い酒やチャボン飲みが二日酔いをおこすといわれていますが、これは飲んだアルコールの総量の問題にすぎないのです。
ビールやウィスキー、カクテルなどと酒の濃度をかえると、いくらでも飲めるからです。また、こういう飲みかたをすると、ふだんの適量がわからなくなって、つい総アルコール量がオーバーになるかとそらです。

ついでにいえば、正月の屠蘇のベースはミリンだし、甘いリキュールも30~40度のアルコール分をふくんでいます。したがって、深夜のスナックで仕上げに飲んだカクテル1杯はビール1本に相当し、翌朝はげしい二日酔いに苫しむことになるわけです。

しかし、二日酔いのいろいろの症状は、ほんとうはアセトアルデヒドの残留量だけで説明されるようなかんたんなものではないのです。

京都大学のもと教授は、二日酔いのときの血液中のアセトアルデヒド値がじっさいにはさして高くないことに注目し、動物実験によって、二日酔い多彩な症状がじつはいろんな内臓の急性中毒の複合現象にほかならないことを証明しました。

たとえば、マウスに大量のアルコールを二口飲ませただけで、翌朝にはマウスの脳細胞にふくまれる「結合水」が60% も失われるそうです。

梅酒づくりで青い梅の実を焼酎に漬けるとしわしわに縮んでしまいます。つまりそれとおなじで、二日酔いの翌朝のあなたの脳はそんなに縮んでいるのです。

検査で髄液をすこし抜いただけで頭痛や嘔吐がおこりますが、二日酔いの翌朝の割れるような頭痛は、これとおなじ脳の脱水症状によることがよくわかると思います。

もっとも、二日酔いのこの脱水状態は水分の補給によって回復します。しかし、しばしば大量の飲酒をくり返しているアルコール依存症の患者さんの脳は、だんだん萎縮してきて、CTスキャンやMRI で調べると、まだ40代なのに60代や70代の大脳のような萎縮像を示す事例が少なくありません。

この脱水状態はとうぜん、脳ばかりでなく腎臓や心臓、肺など全身の内臓にもおこってるので、二日酔いの翌朝はのどがやけつくように渇きます。だから、二日酔いの手当てにはまず水分の補給が第一です。
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これらのほかにも、飲酒の影響はいろいろあります。たとえば、飲酒によって筋肉内のクレアチニンが減り、リン酸代謝が高まります。これははげしいスポーツ後にみられる現象とおなじです。

つぎに、飲酒によって低血糖がおこるので、これを補うために肝臓や筋肉から元気のもとであるグリコーゲンが動員され、また体内のアミノ酸も減ってしまいます。

さらに、アルコールを分解するために大量のビタミンB1が消費され、ビタミン不足になっています。以上のことから、二日酔いとは、大量の飲酒によっておこった脱水、低血糖、からだが酸性になるアシドーシスやエネルギー消耗状態などの複合状態であり、あの、全身から力が抜けるような疲労や困憊が生じるのも当然なのです。

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