アルコール症に移行するさ危険信号(大事なサインがある)

アルコール依存症に転落するには精神的な問題のほうが大きいのです。アルコール依存症回復者たちの自発的な集合に断酒会というものがあります。この合の冒頭に会員が斉唱する「心の誓い」にも、「私は断酒会に入会して酒をやめました。これからはどんなことがあっても酒でうさを晴らしたり、卑怯なまねはいたしません」という文句があります。つまり、うさ晴らしの酒に逃避していた自分の消極的態度を認識することから、アルコール依存症の治療ははじまるのです。

スナックやカラオケで上司の悪口を肴に酒を飲むのはサラリーマンの無上の楽しみかもしれません。しかし、あまり度がすぎて、まわりをへきえきさせるようになると危険信号です。

「はじめは、まわりを楽しくさせるよい酒でした。それがだんだんに不平不満を発散させる酒にかわり、気がついたら1人で飲むようになっていました」これは入社時「会社のホープさん」といわれながら、アルコール依存症になったさる商社マンの述懐です。

日本の多くのビジネスは、とかくアフター・ファイブの商談で決まるしくみが多々あります。島国で、ムラ社会の身内意識が多分に残っている日本では、いままで取引のなかった会社とこれから新たに対人関係をもつかどうかは、アルコールのはいった本音の宴席で吟味されるからなのでしょう。

そこで、日本のサラリーマンは、商談の接待酒、会社内のつき合い酒に個人的なストレス解消の酒と、アルコールなしには1日も機能しない「アルコール・ソーシャル・システム」に、がっちりとりこまれるとになります。

酒が仲間との対人関係の潤滑油になっているうちは無事なのですが、うっぶんばらしの酒でかえって対人関係を損ね、ついに1人でヤケ酒をあおるようになってきた人は要注意です。

もともと飲酒への逃避をおこしやすい性格や、内心の不安をまぎらわすために酒を飲むようになる性格はより危険です。

アルコール症や依存症にならないお酒の飲み方(1日の飲酒量)

1日の飲酒を2合(360cc)以内にする

まず、第一は、1日のアルコール処理能力をこえた大量のお酒を飲まないことです。個人差やその日の健康状態によって多少の幅がありますが、いっぱんに健康な成人男子のアルコール解毒能力は、体重てロ1kgあたり1日2.4gとされます。

体重55kgの人の場合、1日のアルコール処彗旦は130ml(清酒換算で4.7合)となります。

したがって、1日150ml(清酒5.4合)以上の飲酒をつづける大量飲酒から、とうぜんアルコール依存症の発生率は高くなります。

ところで、国内の酒類の年間消費量の推移から、大量飲酒者がどのくらいいるかをみることができます。これは、民族のような大集団になると、その飲酒量は正規分布するという原理によるものです。
つまり、その集団の酒類の平均滑費量を知れば、その集団の大量飲酒者の数が自然に推定できるのです。

1955年から1991年までの36年間の飲酒人口と大量飲酒者の数の推移は、高度成長によるGNPの伸びとともに酒類消費量と大量飲酒者の数は急激に増加しました。1982年ごろから190万人の飽和状態に達して伸び率はにぶくなりましたが、最近では230万人をこえています。

ところで、体内にはいったアルコール分は、もっぱら肝臓で分解されて排泄されます。そこで、この大量飲酒者たちは毎日肝臓を酷使していることになります。

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https://memodiary.wp.xdomain.jp/archives/320

体重60kgの平均的な日本人が1時間で分解できるアルコール量は6.6gで、これは清酒、50ml、(ウィスキーで20ml、ビールは180ml)にあたります。

400ml(2号強)の清酒が体内から完全に排泄されるには長めに見積もると8時間かかることになります。
したがってアルコール分を翌朝に残さないようにするには1日の飲酒量を2合以内に抑えることが大切でこれが健康飲酒の第一条件です。

もちろん、この処理能力は年齢とともに低下します。とくに肝障害をおこして肝臓の機能が50%に低下すると、清酒2合でも4合以上の大量飲酒を行ったのと同等になります。酒のために肝臓をこわしたような人は、キッパリと酒をやめることがだいじです。

週に1~2日は飲まない日をつくる

もうひとつ、四六時中アルコール分が体内に残っていることが、依存症をおこす必須条件でした。この意味で、二日酔いの朝に「迎え酒」をするなどは、アルコール依存症志願の自殺行為ですし、たとえ休日であっても朝から飲酒する習慣は、アルコール依存症になって身代をつぶす近道です。

週に1回は体内から完全にアルコールを追いだす「ドライ・デイ」休肝日をもうけることがアルコール依存症の予防につながります。
四六時中アルコール漬けになっていると、中枢神経系がアルコール分なしにははたらかなくなり、急にアルコールを中断すると自律神経系をもふくめてパニックをおこします。これが、いわゆる禁断症状のメカニズムです。

清酒換算で盲5.4合以上のアルコールを飲んでいる大量飲酒者の場合、体内のアルコールを完全になくすのにおおよそ48時間かかります。そこで、アルコール学会では、週のうちつづけて2日間の休肝日をもうけるよう指導しています。しかし、毎日が2合程度のお酒であれば、まる言問のドライ・デイでも十分でしょう。

2週間の禁酒が脂肪値を半分に
https://bloodvessel.biz/archives/113

飲み始めると止まらなくなってしまう

飲みはじめるとどうしてやめられなくなるのかを考えるときに、実験中央動物研究所の柳田氏が行ったアカゲザルの実験が非常に理解しやすいと言えるでしょう

医学の研究のなかに、ヒトの病気と似た精神病様状態を動物におこさせる実験精神病理学の領域があります。たとえばサルがせっせと麻薬を自分の腕に注射する状態をつくれば、「麻薬中毒ザル」ができたことになります。
麻薬のかわりにアルコールを使用すれば、とうぜんアルコール依存症または、アルコール依存症のサルができます。

ところで、サルがいくら人真似に長けていても、静脈注射までは不可能です。そこで、あらかじめサルの静脈内に細いビニール管(カテーテル)を固定して、それを皮膚に縫いこんでおきます。
そのカテーテルの端をサルに背負わせたランドセル内の自動注入装置に結びつけます。パイロットランプがついているあいだにサルがオリのなかのレベーを何回か押すと、その信号がランドセル内の自動注入装置に送られて、なかから1回分のアルコールがサルの静脈内に注入されるというしくみになっています。

こうした装置によってサルにアルコールの酩酊感を学習させると、4週間後には、サルはやっきになってレバーを押しつづけるようになり、こうして、アル中のサルのできあがりです。

このような依存成立のメカニズムについては、J・オルズの動物実験があります。オルズ氏によると、脳の視床下部、正中前脳束の投射領域には「快楽中枢」があるそうです。

ネズミの快楽中枢に埋めこみ式電極をセットし、オリのレバーを押すと電流が流れる装置をつくると、ネズミは夢中になってレバーを押し続け、快楽中枢に電気刺激をあたえるようになるそうです。

オルズ氏の主張する快楽中枢の場所とは、ノルアドレナリンによって作用のおこる領域です。覚せい剤の効果もノルアドレナリンの動員作用ですから、オルズ氏の見解も否定できません。

オルズ氏の実験は薬物依存の本質にせまる興味深い研究でしたが、彼が亡くなってしまったので、快楽中枢説の評価はうやむやになってしまいました。

柳田氏のアル中のサルの実験も、脳のなかにどこか飲酒の快楽中枢があって、サルはアルコールの注入によってその快楽中枢を刺激しっづけているとも考えることができるでしょう。
柳田氏がアルコール依存症のサルをつくるのには4週間を要しましたが、もっと体重の軽いネズミなどの小動物は、かんたんにアルコール依存症になります。
たとえば、ネズミに大量のアルコールをあたえつづける「急速飽和実験」を行うと、わずか数日で、アルコールを断つといわゆる禁断症状をおこす「アルコール依存症」になってしまいます。つまり、朝から酒を飲みっばなしで、四六時中アルコールが切れないような飲みかたが、アルコール依存症になる近道なのです。

酒飲みがアルコール依存症に変わってしまうのは

問題飲酒とは、要するに自分で自分の飲酒をコントロールできなくなっている状態です。アルコール依存症やアルコール依存症などの区別や定義はありますが、たんなる大酒飲みだった人がアルコール依存症やアルコール依存症にかかわる境目は、飲みだしたらとまらない「連続飲酒発作」にあります。

この「連続飲酒発作」こそアルコール依存症の本質なのです。では、どうしてこんな状態がおこるのでしょうか。「わかってはいるけれどやめられない」とよく言います。

「明日の仕事にひびくから、もうこれで切りあげよう」と思うのに、ついもう一軒とハシゴをしてしまう心理これは酩酊によって意志の中枢(大脳の新皮質)がまっさきに麻酔してしまうので、もう一杯飲みたいという欲求にブレーキが効かなくなる状態なのです。

したがって、まだブレーキが効く量でキッパリ切りあげる習慣さえまもれば、アルコール依存症にはならないことになります。

ところが、「つい悪友に無理強いされて」「会社でおもしろくないことが重なって」、あるいは「祝い酒の度がすぎて」など、肝臓の解毒能力をこえた飲みすぎをつづけているうちに、泥酔から覚めてもまた飲みなおし、数日間飲みつづけるという「連続飲酒発作」がおこってきます。

こうした状態になると、当然会社も休んで、食事もとらず、カーテンを閉めた部屋で、嘔吐して胃が酒をうけつけなくなるまで飲みつづけることになります。

あとで本人に聞くと、飲んでも苦しくなるばかりなのに、病院にかつぎこまれるまで飲みつづけずにはいられなかったと口を揃えます。

酔って人が変わるように変化するケース

泥酔してやたらにからんだり、人がかわったようならんぼうな口をきく人のことを、俗に「トラになった」といいます。これは、知性の座である大脳新皮質のブレーキがアルコールで麻酔されて、その人が本能の座である旧皮質の欲求・攻撃行動に支配されるままの「野獣」と化した状態になるからで、「トラ」というのはいいえて妙です。

この手の人は、翌朝、都合の悪いことになると「覚えていない」といいはりますが、実際には、とぎれとぎれの記憶のあることが多いのです。
しかし、本人にまったく記憶のない「ブラック・アウト」といわれる状態がひんばんにおこるようになったら、危険信号です。

通りがかりに店の看板をもってきてしまい、あとで謝りにいくうちはご愛敬ですみます。しかし、この時期に人がかわったように狂暴になって、ふだんでは考えれないような傷害や強姦、あるいは殺人事件をひきおこして、精神鑑定にまわされるケースもあるからです。

1950年代後半、泥酔のうえで日ごろ仲の悪かった同僚を殺し、死体を勤務先の化学工場の大きな硫酸槽に投げこんで溶かしてしまった事件があり、その精神鑑定をもちこまれたことがあります。

彼は、こんな手のこんだ隠蔽工作をしながら、事件の記憶がまったくないといいはっていました。鑑定人が「再現実験」が大学病院の一室で行われました。再現実験とは、事件当日とおなじ酒量を飲ませ、精神状態になるのかじっさいに観察することです。

素面の彼は、一流会社のエリートらしくいんぎんな物腰の紳士で、「教授にお酌していただいて、昼間からお酒をいただくなど申しわけありませんね」と恐縮しながら盃を重ねていました。しかし、このようにバカていねいな、つまり過度に礼儀正しい人は、じつは内面の強い攻撃性をかくすために自分を偽っていることが多いのです。
つまり、精神分析でいう「反動形成」を行っているから要注意です。

はたせるかな、4合近く飲んだころから、「ああ、監視つきで飲むなんて、うまくもなんともないや」とチラッと本音がでて、こちらをギクリとさせました。その直後、突然「ウォー」と猛獣のように抱えたかと思うと、あいだにあったテーブルを飛びこえていきなり鑑定人につかみかかりました。

小柄な鑑定人はヒラリと身をかわすと、いちもくさんに部屋から逃げだし、とり残された鑑定助手の悲鳴で数人の教室助手がかけつけ、荒れくるうこの人をやっとのことでとりおさえました。

病的酩酊というのは、このケースのように、ある瞬間からまったく人がかわったよぅな狂暴な状態となるものです。しかもそのあいだの記憶は完全になくなっています。

ドイツの犯罪精神医学者は病的酩酊を飲酒によって誘発されたてんかん性「もうろう状態」だと考えています。

ふつうの単純酩酊(いわゆる酔っぱらい)では、酔って意識水準が低下するのとあわせて、運動神経の麻痺もすすんでいます。
舌はもつれ、千鳥足となり、やがて座りこんで寝てしまいます。しかし、病的酩酊では、意識の混濁はひどいのに、運動麻痔がおこるどころか、かえって敏捷になるケースさえあるのです。だからやっかいです。

もうひとつ例をあげてみましょう。もとトラックの運転手。酒がはいると動作がかえって敏捷になり、まず家族が逃げだせないようにマンションのドアをチェーンでロックします。
つぎに110番へ通報されないよう電話線を切断し、家族の悲鳴が聞こえないようにテレビのボリュームをいっぱいに上げるという準備をととのえます。

それから、恐怖におびえる妻子をすわった目でなめまわし、集めた刃物類をひねくりまわすという、聞くだけで恐ろしいケースがありました。包丁をとり上げようとして、妻が手のひらに大けがをし、外来に抗酒剤をもらいにあらわれたこともあります。

しかし、こんなものすごい事例はそうあるものではありません。一般的な事例では、自宅に帰るつもりが、なんと反対方向の電車に乗ってしまい、さらにバスに乗ってある停留所でおりたそうです。まだ自動販売機のない時代でした。タバコが吸いたくなったのか、彼は閉まっているタバコ店のガラス戸をたたき破り、びっくりしてでてきた店主の首をいきなりしめて警察に保護されたのです。

ハシゴした3軒目からの記憶はまったくありませんでした。まだ当時はこの種の酒の上の武勇伝に警察が寛容な時代でした。
店の主人が「なにもおぼえていないというのだから、許してあげてください。店のほうはガラス代さえ弁償してもらえばいうことはありませんから」と口をそえてくれたので、以後、アルコール外来に通うことを条件にこの事件は始末書ですみました。

しかし、最近は身柄を拘置されて、器物破損、傷害罪で起訴される場合もあるのですから、病的酷酎の傾向のある人は注意しなければなりません。

こういう人はあんがい身近にいるものです。酒癖が悪いと評判の同僚や部下がいたら、まわりの人は彼の酩酊時の武勇伝をよく調査して、宴会ではあまり飲ませないようにしてください。

万一、酩酊してきたら、屈強な若手を2~3人もつけて自宅まで送りとどける配慮が必要でしょう。ともかく、異常酩酊の傾向のある人が、顔面蒼白となり、目がすわり、ふだんとはちがう大声をだしてからみはじめたら、さっそく適切な処置をほどこす必要があります。事件をおこしてからでは、あとの祭りなのです。

二日酔いの原因と二日酔いにならない飲酒方法

二日酔いのいろいろな症状がどうしておこってくるのかについては、アルコールの代謝過程について説明が必要です。胃のなかにはいったアルコールは、30分ぐらいで約3割が胃から吸収され、胃内で乳び状になった残りが小腸から吸収されます。
小腸で吸収され血液中へ移ったアルコールの濃度は、お酒を飲んだあと60分~90分でピークに達します。

血液中のアルコールは、肝臓のアルコール脱水素酵素(ADH)によって分解され、まず、アセトアルデヒドになります。中間代謝産物であるこのアセトアルデヒドは、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によさくさんって分解されて酢酸になり、ついには炭酸ガスと水にまで分解されて尿として排泄されますが、この分解・排泄過程が全部終わるまでにはかなりの時間を要するのです。

アルコールの代謝経路

アセトアルデヒドが血液中にいつまでも残ると二日酔いになります。日本人にはALDHの活性の低い人が多く、悪酔いしやすい人が多いのです。

アルコールの代謝経路
アルコールの代謝経路

上図は、アルコールの代謝系路を示したものです。体内にはいったアルコールは、約80% がこの経路で分解されています。

2つの酵素、とくにアセトアルデヒド脱水素酵素のはたらきが悪いと、血液中にアルコール分や有害なアセトアルデヒドがいつまでも残ることになるので、悪酔いをおこしてきます。
中間代謝物質であるアセトアおしんルデヒドは、それ自体で悪心、嘔吐、呼吸促柏、心悸亢進をおこすなど、アルコールより数倍も強小生体反応をおこす有害物質なのです。
現在、アルコール依存症の方の治療に用いられている、酒の飲めなくなる薬(抗酒剤)は、おもにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)のはたらきをブロックする薬理作用をもっています。

少量の酒ですぐ顔が真っ赤になる人(フラッシングタイプ) は日本国内に47% もいます。このタイプのほとんどいない白人や黒人にくらべてとりわけ多い数字です。
これは、日本人にはALDH の活性の低いD型と、活性の高いN型の遺伝子とがまじりあって存在するからです。

日本人のなかには、N型同士の両親から生まれた酒の強いNN型が約5割、D型とN型の組み合わせの酒の弱いND型が4割いて、残りの1割はまったく酒の飲めないDD型とされています。
このDD型の遺伝子のもち主は、たえず抗酒剤をのまされつづけているようなものです。つまり、中間代謝産物であるアセトアルデヒドをいつまでも分解できないので、すこしのお酒で顔はすぐ真っ赤になり、心臓はどきどきし、頭が痛くなり、気分が悪くなって、ついには吐くことになるのです。

このように中間代謝物質アセトアルデヒドのおこす症状が二日酔いの状態にひじょぅによく似ているので、この物質が二日酔いの原因物質と考えられてきました。
大学教授で医学生に清酒5合を飲ませたあと、血液中のアルコールとアセトアルデヒドの濃度を時間を追って測定する実験を行っています。

日本酒5合を飲んだあとの血液中のアルコールとアセトアルデヒドの濃度の時間による変化

清酒5合とは、健康な成人男子の最大処理能力をすこしこえた量で、いっぱんに1日5合以上の酒量をもつ人を大量飲酒者として分類しています。

さて、この医学生の血液中のアルコール濃度は、上図のようにお酒を飲んで90分でピータに達し、その後しだいに下がっています。

これにたいして、血液中のアセトアルデヒド値は、なだらかに上昇して5時間後に最高値に達しています。このアセトアルデヒド値の上昇にともなって、たしかに悪心、嘔吐、頭痛など悪酔いの症状がおこってきます。

二日酔いとは翌朝まで血液中にアルコールやアセトアルデヒドが残っている状態のことですから、清酒5合という大量の酒を飲んで翌朝さわやかな気分で目覚めるためには、この図によれば、遅くとも21時ごろまでには飲み終えて、ふだんの時間に就寝しなければならない計算となります。

しかし、じつさいには22時から午前25時まで飲酒したというようなケースが多いのですから、翌朝の出社時や登校時には相当量のアルコールが血液中に残っていることになります。それが完全に体内から排泄されて、やっと気分がよくなるのには少なくとも3時間はかかるでしょう。

もっとも、飲酒量が少なくなれば、お酒の処理に要する時間もとうぜん短くなります。したがって、翌朝の血液中の濃度をゼロにしてすっきり目覚めるためには、最大許容量で清酒なら3合まで、ビールなら3本弱、ウィスキーならグラス7杯までで、それも遅くとも前夜の23までに切りあげる必要があるでしょう。

俗に、糖分の多い酒やチャボン飲みが二日酔いをおこすといわれていますが、これは飲んだアルコールの総量の問題にすぎないのです。
ビールやウィスキー、カクテルなどと酒の濃度をかえると、いくらでも飲めるからです。また、こういう飲みかたをすると、ふだんの適量がわからなくなって、つい総アルコール量がオーバーになるかとそらです。

ついでにいえば、正月の屠蘇のベースはミリンだし、甘いリキュールも30~40度のアルコール分をふくんでいます。したがって、深夜のスナックで仕上げに飲んだカクテル1杯はビール1本に相当し、翌朝はげしい二日酔いに苫しむことになるわけです。

しかし、二日酔いのいろいろの症状は、ほんとうはアセトアルデヒドの残留量だけで説明されるようなかんたんなものではないのです。

京都大学のもと教授は、二日酔いのときの血液中のアセトアルデヒド値がじっさいにはさして高くないことに注目し、動物実験によって、二日酔い多彩な症状がじつはいろんな内臓の急性中毒の複合現象にほかならないことを証明しました。

たとえば、マウスに大量のアルコールを二口飲ませただけで、翌朝にはマウスの脳細胞にふくまれる「結合水」が60% も失われるそうです。

梅酒づくりで青い梅の実を焼酎に漬けるとしわしわに縮んでしまいます。つまりそれとおなじで、二日酔いの翌朝のあなたの脳はそんなに縮んでいるのです。

検査で髄液をすこし抜いただけで頭痛や嘔吐がおこりますが、二日酔いの翌朝の割れるような頭痛は、これとおなじ脳の脱水症状によることがよくわかると思います。

もっとも、二日酔いのこの脱水状態は水分の補給によって回復します。しかし、しばしば大量の飲酒をくり返しているアルコール依存症の患者さんの脳は、だんだん萎縮してきて、CTスキャンやMRI で調べると、まだ40代なのに60代や70代の大脳のような萎縮像を示す事例が少なくありません。

この脱水状態はとうぜん、脳ばかりでなく腎臓や心臓、肺など全身の内臓にもおこってるので、二日酔いの翌朝はのどがやけつくように渇きます。だから、二日酔いの手当てにはまず水分の補給が第一です。
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これらのほかにも、飲酒の影響はいろいろあります。たとえば、飲酒によって筋肉内のクレアチニンが減り、リン酸代謝が高まります。これははげしいスポーツ後にみられる現象とおなじです。

つぎに、飲酒によって低血糖がおこるので、これを補うために肝臓や筋肉から元気のもとであるグリコーゲンが動員され、また体内のアミノ酸も減ってしまいます。

さらに、アルコールを分解するために大量のビタミンB1が消費され、ビタミン不足になっています。以上のことから、二日酔いとは、大量の飲酒によっておこった脱水、低血糖、からだが酸性になるアシドーシスやエネルギー消耗状態などの複合状態であり、あの、全身から力が抜けるような疲労や困憊が生じるのも当然なのです。

二日酔いの状態、二日酔いと悪酔いの違いも

「二日酔い」とはどういう状態を指すのでしょうかか。また、悪酔いと二日酔いとはどうちがうのでしょうか。

「宿酔」「二日酔い」というのは、ほんらい、禁酒の影響が翌朝まで残っている状態です。これにたいして「悪酔い」とは、酔って頭痛や吐き気をおこすことで、両者ははっきり区別されます。

しかし、実際にはこの両者の合わさった状態を、いわゆる「二日酔い」と考えてよいでしょう。したがって、「二日酔い」の症状としては、頭重、悪心、嘔吐、めまい、顔面蒼白、ひん冷や汗、頻脈、心悸亢進(どきどき)、全身の倦怠感などの身体症状のほかに、地獄にでもめいりこむような「二日酔い」に独特の虚無感がともないます。

一気飲みの危険性

ふつうのペースで飲んでいれば、アルコールは飲むかたわらから体内で分解・排泄されていきます。したがって、血液中の濃度が危険な第五期まで達することはありません。

しかし、「イッキ飲み」などで焼酎やウイスキーなどアルコール濃度の高いお酒を急速に飲んだ場合は、血液中の濃度が危険ラインまで高まり、呼吸麻痺で死亡するケースもおきます。注意しなければなりません。

消防庁のまとめによると、当時、全国で9つの政令指定都市において急性アルコール中毒で救急車のお世話になった人は約2万人であり、圧倒的に若者が多いということです。

当然に死亡例もこのなかからでます。しかし、大学の新人歓迎コンパなどの死亡例の記事をみると、第五期の呼吸麻痺にでいすいよる麻酔死をおこしたものよりも、じつさいには第四期の泥酔状態にありながら、介護者かいないために吐いたものをのどにつまらせて窒息死したり、池にはまって事故死する場合などが多いようです。

酒がスピリットというほど発揚効果をもつのは、アルコールによって覚醒物質である覚醒アミンが一時的に脳内に放出されるためでもあります。

しかし、その反動として、翌朝には脳内興奮物質の不足によって、宿酔の朝のめいるような虚無感がおこることになります。

飲兵衛には避けて通ることの出来ない「アル中」についての中で「ほんの少し酔ったあとの落とし穴」はとてもよく理解できます。

心地よいほろ酔いと危険な境目

アルコールの農道が第三期に達すると、麻酔は運動神経に及んで千鳥足になり、思わず電柱をかかえたりすることになります。舌はもつれて言語は不明瞭になり、眼の動きを支配する動眼神経も麻痺してものが二重にみえてきます。この時期には理性は全く麻痺し、ヒトは感情脳でもある旧皮質に支配され、やたらに怒ったり、泣いたりします。

さらに麻酔がすすんで第四期になると、すっかり足をとられて立っていられなくなって、道路に座りこんで眠ってしまいます。他人のことばの意味がまったく理解できず、みさかいもなく手を上げたり、肩で息をつき、気持ちが悪くなって吐いたりします。ほうっておくと、吐いたものを気管につまらせて窒息死する場合も多いので、気をつけなければいけません。

ついで、第五期になると昏睡状態におちいり、ついには呼吸中枢のある脳幹にまで麻酔が及んで死亡するのです。

心地よい酔い(酩酊~ほろ酔い)

酔っぱらった時に起きる体内で起きていること

陶然たる酒のここちよい酩酊感とは、酒が理性の座である大脳の新皮質を適当に麻痺させて、浮世のしがらみをしばし忘れさせることから生じるものです。

薬理学からみると、酒の主成分であるエチルアルコールは中枢神経の麻酔剤にほかなりません。胃腸から吸収されたエチルアルコールは、血液中にはいって大脳に達し、抵抗力の弱い大脳新皮質から徐々に麻酔させていきますが、このとき、呼吸中枢などの生命の維持に中枢のある脳幹には達しせいように、「血液脳開門」によって守られています。

以下にアルコールの血液中の濃度と離酎度の相関があります。ついでに、飲んだお酒の量と酔いかげんのおよその関係も以下のとおりです。

1期(0.05~0.10)

  • ほろ酔い
  • 制御除去
  • 不安・緊張の減少
  • 陽気、顔面紅潮
  • 反応時間遅延

2期(0.10~0.15)

  • 多弁、感覚軽度純痺
  • 手・指の震え
  • 大胆・感情不安定

3期(0.15~0.25)

  • 衝動性、眠気、平衡感覚麻痺(チドリ足)など感覚麻痺
  • 複視・言語不明瞭
  • 理解・判断力障害

4期(0.25~0.50)

  • 運動機能麻痺(歩行不能など)
  • 顔面蒼白
  • 悪心・嘔吐
  • 昏睡

5期(0.35~0.50)

  • 昏睡
  • 感覚麻痺
  • 呼吸麻痺

ここちよい酩酊感がえられるのは、アルコールの血液中の濃度が0.1%前後である第1期から第2期までの時期です。この時期には、本能の座(旧皮質系)の欲求行動に理性の座(大脳新皮質)からかかっているブレーキが過度に麻痺してきます。

だから、ふだんのかたくるしい精神的しらふな緊張がとれて、人は陽気になり、素面では口にできないような大胆な言動にでたりします。

タテマエばかりの管理社会に生きているサラリーマンが酒を飲むのは、この第1~2期の麻酔作用によって、抑圧されっばなしの本能行動を解放して大哲人一休禅師のような自由人に変身し、欲求不満を合法的に解決できるからなのです。

しかし、ほどよい酔いかえられるのは「ほろ酔い極期」までで、清酒なら3合、ビールなら大瓶3本、ウィスキーはシングル6~7杯までです。