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アルコール依存症

薬物依存のひとつで、かつては慢性アルコール中毒と呼ばれた。しかし、薬物依存に対する理解が深まるにつれ、薬物やアルコールを摂取する行動そのものに問題があると考えれるようになったため、現在ではアルコール依存症が用いられている。アルコールは薬物と違い、社会的に許されている嗜好品なので、アルコール依存症やそれに関連する精神障害は社会的に大きな問題となっている。

原因

いうまでもなくアルコールの飲みすぎだが、性格傾向がかかわっており、小心で他人に依存的で、意志薄弱な人が陥りやすい。家庭内の不和、職場での不満などをまぎらわすために飲みすぎる場合もある。
また、酒屋や居酒屋、アルコールをよく飲む家庭など、アルコールが身近にある環境も影響するとされる。

症状

アルコールを大量に摂取し続けると、さまざまな障害が起こる。肝臓、膵臓、胃腸、心臓など内臓の障害、栄養低下による衰弱などに加え、脳や神経、感情が障害を受けると、道徳観が失われたり、ものごとの判断力や理解力、記憶力も低下する。

ときには幻覚や妄想をみるアルコール精神病やアルコール痴呆を引き起こして、家庭破壊や失職につながることも少なくない。精神症状は、アルコール依存から脱却しようとしたときに禁断症状(離脱症状)としてもあらわれる。

たとえば禁酒して数日間は手足がふるえたり、不眠や不安、焦燥感に襲われて神経が衰弱した状態になる。その後、意識が急激に混濁し、全身のけいれん発作が起こったり、幻覚をみたり、判断力が低下して異常な行劾をとることもある。

治療

禁酒することが治療のすべてである。禁酒による禁断症状が続くのは、およそ1週間程度。手足のふるえや意識の混濁が3~4日続いたのち、1~2日の深い睡眠状態に陥り、睡眠状態から覚めたときには中毒症状から抜け出しているという場合が多い。

治療法としてはきわめて単純だが、強い意志と家族の協力が必要だ。禁酒に自信のない人は、各地の禁酒会などに入って、同じ悩みをもつ人と励まし合いながら治療する方法が効果的である。なお入院して治療する方法も考えられる。

アルコール依存症からの脱出 | 現代人のストレスについてはこちら。

精神分裂病

精神病のひとつで、神経症が不安や緊張といった心理的要因によって起きるのに対し、分裂病は体質や気質など、人それぞれがもつ精神的・心理的要因によって起きると考えられている。また神経症が健康な状態から症状があらわれるときへと「移行する」のに対し、精神分裂病は健康な状態とは完全に隔離された状態の病気である。
この病気は、一般に慢性の経過をたどる。しかし、薬や治僚法の進歩によって、最近では、かなり治るようになっている。

症状

精神分裂病を症状からみると、次の3つに分けられる。

  • 破瓜型
    思春期から20歳前後にかけてみられることが多く、精神分裂病のなかでは最も早くあらわれる。症状としては、日常生活がだらしなくなる、不潔になる、これといった理由もなく学校の成績が下がる、といったことがある。また活力や自発性が失われ、友人との交際が疎遠になり、自室でぼんやりしていることが多くなる。知性は以前のままだが、生気が感じられないという印象が強い。
  • 緊張型
    激しい興奮状態、または混迷状態から病気が始まるもので、一般的な精神病のイメージに最も近いタイプといえる。突然興奮して叫ぶ、暴れる、その場の状況とは全然関係がなくまわりの人間には理解できないことをする、といったことが典型的な症状だが、その激しさとは対照的に、1ヶ月から数か月で症状は消えて回復する。ただし、2回、3回と同じような発作を繰り返すことが多く、そのたびに少しずつ人格が崩壊していく、という経過をたどる。
  • 妄想型
    破瓜型とともに多いのがこのタイプで、妄想や幻覚、幻聴などがあらわれる。この妄想や幻覚などには共通した要素があるのが特徴である。それは他人が自分に対してあざ笑う、陰口をいう、攻撃するといった被害妄想で、そのほかに「妻が浮気している」(嫉妬妄想)、「自分は天才である」(誇大妄想)、「だれかがあとをつけている」(追跡妄想)といった妄想がある。また、実際にはないにおいや味を感じる幻臭、幻味、また異常体験などが起きることもある。

原因

体質や気質など、個人の内部的要因がさまざまにからみ合って発病すると考えられている。しかし、これは原因となるものを検討した結果、心理的な要因をはじめ、アルコール中毒症や老人性痴呆症といった外因が否定され、内因だけが残ったということで、厳密にいえば推測でしかない。

経過

破瓜型が慢性化しやすく、極端な場合には廃人同様の状態に陥るのに対し、緊張型は比較的短期間のうちに治りやすい。破瓜型ほどではないが、妄想型も半年から1年程度症状が続くケースが多い。ただし破瓜型のように人格が破壊されるようなことは少なく、多少の影響はあっても日常生活を続けられることが多い。

診断

精神科医が診察すればおおよその診断は可能だが、念のために内科的な検査で、脳の病気やアルコール中毒症などの病気がないことを確認する。
また現代では症状のあらわれ方が以前と比べて軽くなっており、そのためどのタイプに属するのか決めかねることも多い。

治療

薬物療法と精神療法が大きな柱となる。現在では、治りにくい精神分裂病は全体の3分の1にすぎず、残りの3分の1は抗精神病薬でほぼ完全に治り、3分の1は薬物療法と精神療法、生活改善などでかなり回復するようになっている。
ただし治すためには早期発見と早期治療が原則である。そのため精神分裂症の素質(分裂気質) をもっている人に病気の兆候が見えたときには、早めに専門医の診察を受けるようにすることが大切。

とくに思春期から20歳代前半にかけて発病するケースが多いので、分裂気質をもったその年代の人が周囲にいる場合には、温かく、かつ注意深く見守る必要がある。

生活の注意

本人には病気だという自覚がないので、医師の診察を受けさせるときには、十分話し合ってから受けさせるようにする。無理やり、またはだまして連れていくようなことは厳禁である。

医師に相談し、家族では説得できない場合には、患者が信頼している知人に説得してもらうというのも、ひとつの手である。また家族が外聞をはばかって卑屈になると、患者はそれを敏感に察知して病気を悪化させることになる。
決して治らないわけではないので、患者を励ましながら治療にあたることがいちばん大切である。

爪の病気

爪は、皮膚の表面のケラチンからなる角層が変化したものである。したがって爪の病気には、皮膚の病気に伴うものが多くみられる。
しかし、ときには全身の病気の症状のひとつとして、爪に異常があらわれることもある。

爪甲剥離症

爪が皮膚からはがれる病気だが、完全にはがれて抜け落ちるという症例はなく、ひどいときでもはがれるのは半分くらいである。原因については不明な点が多いが、バセドウ病やカンジダ感染によって起きる例がある。

爪甲周囲炎

爪の周囲の皮膚がはれて、ときにうみが出る病気である。原因としては、ブドウ球菌などの細菌による炎症や、カンジダ菌の感染によるもののほか、きわめてまれであるが稽留性肢端皮膚炎などが考えられる。なおカンジダ菌が原因となって発症する爪甲周囲炎は、水仕事をする機会の多い中年女性や、糖尿病患者などによくみられる。

爪甲白斑症

爪の甲が白くなる病気だが、白くなる様子は、点状のもの、横縞状のもの、爪全体が白くなるものなどさまざまである。なかでも最も多いのが点状の爪甲白斑症で、次いで横縞状のものが多い。
これは低たんばく血症やヒ素中毒などに多くみられるが、遺伝によって起きるケースもある。また、いずれの場合も、健康な人がかかることがある。

爪甲鉤弯症

爪が異常に大きくなって、羊の角のように曲がるもので、ときには数センチもの長さになることがある。足の親指に多くみられる症状で、そのほとんどは靴による圧迫が原因である。ただし、きわめて少ない場合だが、へいそく下肢の静脈瘡性症候群や血管閉塞、末梢神経障害で起きることもある。この場合、障害の起きた側の足の指に症状があらわれるという特徴がある。

爪甲軟化症

ケラチンという成分が不足して、爪の甲が異常にやわらかくなってしまう病気である。汗をかきやすい人に多くみられる。またアルカリ性の物質を扱うときに、その物質が爪に作用し、さじ状爪とともにあらわれることがある。
これは、クリーニング業などのようなアルカリ性の物質を扱うことの多い人によくみられる。いずれの場合も、栄養状態とは無関係にあらわれるものである。

さじ状爪

爪全体または爪の先端だけがスプーンのようにへこむ病気で、鉄欠乏性貧血のときにあらわれる症状として、よく知られている。鉄欠乏性貧血が治ると消失するので、治療には鉄剤が用いられる。

爪白癬

爪に生じたみず虫のことを爪白癬という。爪が白濁するとともに、爪の下が厚くなり、また爪がもろくなる。爪甲と爪床の間に爪白癬菌がはびこるため、一般のみず虫のように薬を上から塗っても効果がなく、グリセオフルビンなどの抗爪白癬剤を内服することで治療する場合が多い。