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やめなくてもよい、恨まない

最近のギャンブル依存症の治療では、「ギャンブルをやめなさい!」というアプローチをしないのもの多数あります。その代わり、次のような話があります。

ギャンブルはひとつの欲望だけに絞って追求してください。勝利欲や名誉欲を追求すると、毎月これだけのお金が消えていますが、そこで「損をした」とか「お金をドブに捨てたようなもの」などと考えてないこと。

勝利の喜びと名誉と感動を体験させてもらっているのですから、それではギャンブルの提供者に失礼です。ありがたく5万円でも8万円でも「お布施」として出してください。損をした、お金をドブに捨てたという考えが頭をもたげるのは金銭欲のせいです。

その発想が頭の片隅に残っている限り、つねに不充足感がつきまといます。その結果、損失を補うという目的の「余計な」ギャンブルをしてしまいます。勝ちたいためにやっているのか、お金を儲けたいのかがわからなくなるのは邪道です。

ひとつの欲望に徹してギャンブルをしてくださいこういうことをひたすら説き続けます。「やめましょう」とか「してはいけません」とは絶対にいわないのがこのアプローチのポイントなのです。むしろ「してください」「徹底してください」「相手に感謝しましょう」と説くわけです。

ギャンブルで勝利欲を満たして代わりにお金を失ったとしても、ひとつの欲望達成には役立っているのですから、本来なら「ありがとう」と感謝すべき。それなのに欲望が乱立していると金銭欲という別の目標が達成できないゆえに「オレの金をとりやがった」という恨みに変わります。恨みを抱くと「いまに目にもの見せてやる」「全部とり戻してやる」という復讐心忙つながります。復讐心は、人間の心を狂わせます。そして、復讐心と感謝とは正反対のものです。

ギャンブルにのめり込んでいる人は、ギャンブルに対して激しい恨みと復讐心を持っています。複数の欲望を求めると、それらをすべて充足させることはできなくなり、どううまく立ちまわっても恨みや満たされない心、欲が燃え残ります。

ですから、はなからひとつの欲望だけを追求して、それを満たしてくれて「ありがとう」と心の底から感謝するべき。となると、下手な復讐心や恨みは少なくなります。復讐心や恨みがあると、とっくに尽きた緑もなかなか切れません。これを「腐れ縁」と呼びます。

勝った!オレって天才 にいくらお金をつぎこむのか

ワークシートでは「ギャンブルの目的=欲望」を重要な順番に並べてもらいます。

欲望が複数あり、たとえば、第1位が勝利欲、第2位が金銭欲、第3位が名誉欲だったとします。その場合はいちばん求めたい欲望、優先順位の高いものだけに狙いを絞ってギャンブルをしてもらいます。

勝利欲なら勝利欲、金銭欲なら金銭欲、名誉欲なら名誉欲をとことん追求してギャンブルをしてもらうのです。金銭欲に徹するとたいていプラスマイナスゼロくらいで収まるのですが、勝利欲や名誉欲を追求するためのギャンブルだと結果的にマイナスが多くなります。

あらゆるギャンブルは勝つ確率よりも負ける確率のはうが高いもの。そうでないと、ビジネスとして成り立ちません。仮にあるギャンブルに勝つ確率を10分の1 とすると、残りの10分の9 は負けてしまうわけですから、勝利欲を満たすためには結果的にマイナスが多くなるに決まっています。

つまり勝利にこだわるギャンブルでは、金銭的な損失が大きくなると覚悟するしかないのです。ただそれがいちばんの楽しみなら仕方ありません。週2回、1回1万円の軍資金でパチンコ店に通うとしたら、かかるコストは月8万円です。

そのうちの1回くらいは勝つ喜びを味わえるでしょう。それに感謝できるかどうかです。依存症の人は毎日ギャンブルをしようとしますが、勝つ喜びを得たいがためにギャンブルをするなら、それを月1 回ペースで味わえばいいと割り切るしかありません。

10回に1回しか勝てないのだとしたら、毎日通っていたら返済できない借金を背負い込むのが明らかだからです。求めたいのが勝利欲や名誉欲だとしたら、そのためにつぎ込める自分の小遣いを考えて通う回数をセーブすべき。結果的につぎ込んだお金は全部消えてしまって金銭欲は満たせませんが、その人にとっては金銭欲より勝利欲や名誉欲のほうが大事であり、レジャーであり道楽になっているのですから、なんの問題もないわけです。

酒好きでスナック通いが習慣になっている人も1回1万円前後はかかりますから、ギャンブルで1回1万円を失うのはさしたる問題とはいえません。ギャンブルで純粋忙勝つ喜びと名誉を味わいたいのだとしたらそれだけに徹するといいのですが、少し考えると勝利欲や名誉欲を味わうための必要資金としてはお金がかかりすぎていると気がつきます。

そこでこちら側から「もうちょっと安い資金で同じ感覚を味わえませんか」という疑問をぶつけます。「勝った! 」「やった! 」「オレはやっばりすごい! 」という勝利欲や名誉欲を味わうため、毎月8万円もかけているのは多すぎませんかという結論です。

代替方法を見つける

「ギャンブルの目的=欲望」を重要な順番に並べてもらったら、「それぞれの目的を果たすためにどのような工夫や努力をしてきましたか? 」と聞き出します。そう聞いても、大半の方はただ闇雲にギャンブルをしているだけ。「小遣い(遊興費等) 稼ぎのため」「生活費稼ぎのため」「借金返済のため」といった目的を上位に置く方がほとんどですが、プロのギャンブラー以外の大多数にほ、金銭欲を満たすためのギャンブルは困難ですし、お金を増やすための工夫や努力はアルバイトなどギャンブル以外にいくらでもあります。

この問いは凝虫申ため臨ギ幣ンぎ兆をb ているといいなが島、轟鈍釈奄満た登うとしでいる泥捗で陳ないLとい藩現状奄改め芯綾取しで各島うためのもの准ので黎怨したがって「目的は果たされましたか? 」という問いでは、多くの方が「お金のためにギャンブルをしていると言いながら、「金銭欲を満たそうとしているだけではない」という現状を改めて確認してもらうためのものなのです。

したがって「目的は果たされましたか?」という問いでは多くの方が「はたされてない」という答えになります。

そこで、続く問いでは「さまざまな工夫を試みたにもかかわらず、目的が果たせなくなった理由」を訊ねています。ワークシートにあるように、その理由は「ギャンブルそのものが目的を達成する手段としては不適切なものになってしまった」か「複数の目的を求めたために結果としてそれぞれの達成度が中途半端なものになった」かのどちらかです。

ギャンブルが欲望達成の手段として不適切なものになっているのなら、目的を達成するためのギャンブル以外の代替方法を探します。

金銭欲なら金銭欲、勝利欲なら勝利欲を果たすための、ギャンブル以外の適切な方法を見つけるのです。複数の目的を求めたために結果としてそれぞれの達成度が中途半端なものになったというのなら、目的をひとつに絞ってギャンブルをします。同時に外した目的を達成するために代替方法を探します。いずれにしても、ギャンブル以外の方法で自分の欲望を満たす手段を探していくこのプロセスこそが、欲望充足法の特徴です。