退職金を使い果たして生きている実感を味わってもしょうがない

生きているという実感を手っとり早く味わえるという点では、ギャンブルのほかにアルコールがあります。というのも、酒は酔うほどに感覚が鈍くなると思われがちですが、アルコール依存が形成されると飲んでいるときのはうが、脳は生き生きとして活性化するのです。

そして過去の出来事がすべて自分に都合のいいように書き換えられます。退職した高齢者がかつての仕事を振り返って、「オレがあの難しい交渉をまとめなければ、いまの会社はないんだ」などと都合のいいように脚色して達成欲、名誉欲を満たしていきます。

でも、酒が飲める体質でない場合、同様の実感を得る目的でギャンブルに走るケースもあるのです。そういう高齢者の多くは家族からギャンブルにのめり込むことを責められながら、治療を強いられて病院を訪れます。

「年をとってからギャンブルで借金までしてみっともない」とか「退職金を食いつぶして一体どうするつもりなの! 」というふうに妻や子どもたちから散々非難されてやってくるのです。

ギャンブルに求めていたのは「自分のことを評価してほしい」という欲求だったのに、それをギャンブルで満たそうとしている間に、家族の評価を大きく下げる結果になってしまうわけです。

高齢者は人生経験を積んでいますから、ギャンブルは損をするし、割に合わないというのは理性ではわかっています。ただ一時的に「自分もその気になればまだまだできる」「本当はすどい」と評価してもらいたいだけ。そんな高齢者には過去の豊富な人生経験のなかから、ギャンブル以外で達成欲や名誉欲を満たせたことを見つけなければいけません。

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