2020年 2月 の投稿一覧

今度やったら今度こそ「離婚する」「別れる」は甘えさせるだけ

夫のギャンブル依存症で困っている妻のなかには、離婚届を書いてそれを歯止めにしてもらうという手を使う人もいます。

「あなたが今度ギャンブルに手を出したら、無条件で離婚します」などと一筆書き、日付を空欄にして夫に署名捺印してもらうのです。あとは妻が名前を書くだけで有効になるようにしておいて、金庫なりタンスなりにしまっておくという方法です。

ところが、夫が約束を破ってギャンブルに手を出したら実際に別れるかというと、そんなことはありません。

多くの依存症の方を見ているとこの方法で別れた実例はほとんどありません。本気で別れるつもりなら「別れたい」と思ったその日に役所にいって離婚届を出すなり、あるいは相手が「別れたくない」というならすぐに調停をかけないとダメです。

中途半端な脅しは、「どうせ別れないくせに」と依存症者に高をくくらせ、甘えさせるだけで依存症者の家族や周囲の人たちが、ギャンブルをやめられる状況をつくることは大切なことですが、それでもギャンブルを必要とする状況は周期的にやってきます。

そんなときに「今度やったら離婚するよ! 」という脅しは歯止めにならないのです。もしどうしても脅したいのなら、「ただちに自助グループへいけ! 病院へいけ!裁判所へいけ! もしいかないなら、私が具体的な行動をとってあなたの面目を丸つぶれにしてやる! 」と啖呵を切るくらいの覚悟がいります。

その場合、妻は夫と一緒にその泥を被る覚悟が不可欠。それくらい腹をくくって脅すのなら有効だと思いますが、行動をともわないただの脅しは相手に「まだまだ大丈夫だな」と思わせるだけです。

ですから、夫のギャンブルに悩む妻が離婚届をわざわざ書く必要はありません。「本当に別れたいと思ったら別れよう」と心に刻んでおけばそれでいいのです。中途半端な脅しを繰り返していると、依存症者は「自分は嫌われている。愛されてない。いつ離婚されるかわからないし、自分のことを認めてもらえてない」という不安と恐怖にさいなまれます。

すると家庭にいでも安らぎが得られませんから、ギャンブルに癒やしを求めるという、悪循環に陥ります。

妻にとっても、亭主が嘘をついてギャンブルをしていないかどうかを、うの目たかの目で見張る生活が続きますから、どちらも無用な緊張感と苦痛を味わうだけです。

たとえ家族でも依存症者の心理は理解できないもの

ギャンブル依存症の本人よりも家族のほうが苦しいというケースは多々あります。そんな家族に精神科医などは「彼らは病気だから仕方ありません。それを理解してあげましょう」といういい方は無用な苦しみを生んでしまいます。

基本的にはなんとか家族のギャンブル依存症を治したい!そして理解しょうと一生懸命です。それでも依存症本人の歪んだ心を理解するのは非常に困難です。

金輪際ギャンブルには手を出さないと誓った舌の根も乾かないうちに、子どもの貯金箱を壊したり、学資保険を無断解約したりして、いそいそとギャンブルに出かけていきます 。

ギャンブルで大損するたびに「どめんなさい、すみません、もうしません」と泣いて謝るのに、しばらくおとなしくしていたかと思ったら、また同じことの繰り返し… 。

いくら家族でも、こんな心情を理解しょうとしても無理なのです。古典的な時代劇に出てくる丁半博打にウツツを抜かす悪い父親のように、妻や子どもを足蹴にして堂々とギャンブルにいくならまだ理解もできますし、諦めもつきます。そうなるとバカバカしくてつき合い切れないと覚悟もつきますから、迷いなく離婚などの決断ができます。

そうではなくて「ごめんなさい、すみません、もうしません」などと泣いて真剣に謝るのですから、その不可解さを理解しろといっても無理です。自分の夫でも妻でも子どもでも親でも、依存症者の内面をうかがい知るのは難しいのです。

寝ても覚めても頭を巡る借金には解決方法がある

ギャンブル依存症には、影のようにつねに借金がつきまといます。借金は連帯保証人になっていない限り、借金の返済が両親や配偶者に請求されることはありません。

サラ金規制法(貸金業法) で守られていますから、夫の借金のとり立てが自宅にやってきたとしても「亭主の博打の借金を、なぜ私が払わなきゃいけないの。亭主からとってちょうだい。給料を入れてくれなくて家計が苦しいんだから、なんなら過払い利息を私にちょうだい」などと妻はごねればいいのです。

ただし、博打打ちと一緒に暮らしている以上、自分の実印や持ち家の権利証(登記済証) はきちんと管理・保管しないといけません。実印や権利証の類いは念のために実家の親に預けておくはうが安全でしょう。

これは本人に余計な葛藤を与えないための家族としての配慮です。「信用する」か否かの問題ではありません。実印は普段はあまり使わないものですから、いったん役所で登録抹消する手もあります。こうしておけば借金問題に巻き込まれる危険性はかなりと減ります。

借金が本人の返済能力を超えたら「ごめんなさい」と裁判官に申し出れば、返済額の減額をしてもらえます。資産を隠したり、年収を低くどまかしたりして、返済額を減免してもらうのは違法ですが、「うちには小さな子どもと年寄りが同居しているので、月々これくらいの生活費がいります。

また、回復のための欲望充足法のため月1万円ほどは趣味のお金もいります。だから、差し引き借金の返済に充てられるのは、月2万円までです」などと包み隠さず正直に申告すれば、ギリギリ払える額まで返済額が減免してもらえるケースが大半です。

自己破産されたら困りますから、貸し手側としても月々決まった額を返してくれるなら多少の減額は黙ってのむはかないのです。

お金を貸した側は「借りたものを返さないのは人間のクズだ。生きる資格はない! 」などと罵倒するかもしれません。貸し手サイドの心情としては当然でしょう。でも、現代の資本主義には「借りた金は絶対返せ。借りた金を返さないのは人間のクズだ」といい切れるルールはないはずです。その証拠に日本ではバブル経済の崩壊後、大銀行は返せなくなった不良債権を「ごめんなさい」と頭を下げて全部国民に肩代わりしでもらっています。

「借りた金を返さないのはクズ。資本主義の風上にも置けないから即刻退場せよ」というなら、日本の大手銀行の大半はバブル経済崩壊と同時に消滅していないとおかしいのです。「返せない状況に陥ったら、返せる範囲で返してもらって構いませんよ」という形で維持されているのが、資本主義システム。

ギャンブルが御法度のイスラム国家や社会主義国ではそうはいかないでしょうが、少なくとも現代の日本では借金を返せないことと存在価値とはなんの関係もありません。返せる人だけが正直に返せばよいのです。借金を苦に命を捨てるのはやめてください。