自閉型・非自閉型

自閉型の回復プロセスの特徴

自閉型はなんらかのきっかけでギャンブルにはまると習慣化しやすいという弱点があるものの、逆にいったんギャンブルを断つと続きやすい傾向があります。

断ギャンブルを続けるには、自助グループへの定期的な参加をはじめとして、ギャンブルという刺激のない日常生活での単調な繰り返しが求められます。このプロセスでは、ギャンブルにかかわる情報の遮断、ギャンブルにともなう人間関係を断つことも求められますが、これらの行動や思考の単純化は自閉型にとっては心地よいものです。

「仕事、運動、食事、睡眠という一定化した生活リズムができること(が喜び)」「スロットができないつらさについては、深く考えないようにしている( = 考えないようにできる)」といった発言は自閉型の特性を明らかに示しています。ギャンブルをしない生活習慣が単調化かつスケジュール化されたら、単車線認知パターンを示す自閉グループは、そのまま断ギャンブルを続けられます。

 

さらに本人の興味に合うように新しぃ趣味や習慣が見つかれば、断ギャンブルがより安定化します。

自助グループへの参加もスケジュール化のひとつとして有効ですが、コミュニケーションが苦手な自閉型にとって他人との交流や自己開示は負担になることもありますから注意が求められます。非自閉型は罪悪感の強さが回復を疎外する要因となりますが、これと対称的に自閉型では当事者意識が希薄であり、過去のギャンブル行為や借金から生じる罪悪感に苦しめられることは比較的少ないです。自閉的な気質では、この点でも断ギャンブルを継続しやすいといえるでしょう。

自閉型には心地よい行為と場所

非自閉型は「なんのためにギャンブルをしたいのか」という動因が明らかでしたが、自閉型はこれと対称的です。「(勝ちたいという欲求がなく) ただパチンコにお金をつぎ込むだけのロボットだった」「1日ぼんやりと過ごせることに安らぎを感じる」といったコメントに表れているように、なんのためにギャンブルをするかが不明確なのです。

「ストレス解消のため」といった最初のきっかけは確かにあるのですが、依存症が進行するにつれてギャンブルをする動機がはっきりしなくなってくるのです。自閉型は、ギャンブルを好んでやっているという「自己所属感」が希薄であり、どのような心理がギャンブルへ駆り立てるのかがはっきりしません。

したがって本来充足すべき欲望がなかなか見つかりません。そこで自閉的な気質に目を向けます。自閉的な気質には「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「反復性行動傾向と興味の限定」という3つの側面があります。

なかでも変化を嫌う反復性行動傾向は、社会性やコミュニケーションの障害と比べると社会経験をへても改善する可能性が低く、成人になっても残りやすいです。したがってギャンブルをする習慣であれ、しない習慣であれ、ある種の習慣が身に付くとパターン化、固定化しやい特徴があります。

自閉的な気質による生活のパターン化は「単車線認知パターン」でより具体的に説明できます。単車線認知パターンとは、あるものに注意が向いているときには他の刺激に対して反応を示さないというものです。ギャンブルという行為とギャンブルをする場所は、いかにして賭けに勝つかというひとつの目的と刺激に支配されています。

自閉的な気質の持ち主は、いろいろな刺激から自分が好む刺激を選ぶことを強いられるのが苦手ですから、単一の目的と刺激で満たされているギャンブルは、心地よい行為であり心地よい場所なのです。ギャンブルのなかでも競馬や競輪、カジノのように複雑な情報処理が求められる戦略的ギヤンブリングよりも、パチンコやスロットのように単純化された非戦略的ギヤンブリングのほうが、自閉的な気質の持ち主には親しみやすいといえます。

非自閉型の回復プロセス 内観療法について

もうひとつの内観療法とは、とてもシンプルです。次に掲げる「内観3項目」を幼少期から現在まで3歳刻みに自分のことを思い出していきます。

  1. してもらったこと
  2. 返したこと
  3. 迷惑をかけたこと

対象者は両親、配偶者、兄弟、子どもなどです。

この内観療法には「分散内観療法」と「集中内観療法」があります。分散内観療法は、期間をとくに定めることなく、毎日15~30分程度思い出し、治療者との面接時に定期的に報告してもらう方法です。

つい一方の集中内観療法は、1週間程度、病院や研修所などに泊まり込みます。衝立てでl m四方ほどの個室スペースをつくり、治療者以外との交流や音楽鑑賞などを禁止して、外部との交わりを遮断します。

面接は1回5分程度を2時間どとに1日計7回。治療者は患者が思い出したことをひたすら聞くだけで、コメントなどはしないようにします。

こうした内観療法では「3迷惑をかけたこと」を思い出すことで、罪悪感が強化されます。この場合の罪悪感は、はじめのうちは「どうせ自分が悪者なんだ」という被害者意識、もしくは自分を哀れむ「自己憐憫」が強い罪悪感(閉鎖的罪悪感) であるケースがほとんどです。

ところが「1してもらったこと」(被愛事実)を思い出していくと徐々に「すまなかった」という感謝をともなう開放的罪悪感に変化します。この俄悔心とも呼びたいような健康的な罪悪感を得ることで、安定した断ギャンブルへの移行が可能になるのです。