自分でも気づかない欲望に気づく

欲望充足法の概略とワークシートの説明を終えたところで、その治療法についてさらに詳細を説明します。

初診では、ワークシートについての説明と診察を兼ねて1時間ほど行い、まずは自分の欲望の確認をします。Q1ではギャンブルをはじめた目的、Q2では現在のギャンブルの目的を訊ねます。この目的こそが、その人のギャンブルに対する欲望を表します。

じつは、Q1でギャンブルをはじめた目的を尋ねることには別に大きな意味はありません。「はじめたとき」の目的がなんであろうが問題ではなく、Q1で訊ねる「現在の」目的がポイントだからです。

多くの欲望を抱えているほど混乱して、「自分がなんのためにギャンブルをしているのかわからなくなる」という状態になります。現在のギャンブルの目的を尋ねると多くは「借金を返すため」という答えが返ってきます。のめり込みがある程度進むと、借金をしてまでギャンブルをするからです。

依存するほどのめり込む人の多くは借金を負っています。となると、その借金をいかに返すかで頭がいっぱいになるのです。なにかには追い立てられるように、せっつかれるようにギャンブルをして、たとえ勝ってもそれを全部借金の返済に充て、それでも追いつかなくなる…という人もいます。

そうなってからはじめて受診する人が多いですから、現在のギャンブルの目的と尋ねると「借金返済のため」もしくは「生活費稼ぎのため」と答える人が多いのです。

でも、すでに触れたように金を増やすため、つまり金銭欲のためにギャンブルをしているというのは表面的な思い込みにすぎません。お金を増やすためのギャンブルなら、ギャンブルをする場所や機器をじっくり見極めます。それと同時に「今日はツイてない」と思ったら潔くそこで諦め、逆に「今日はいけるぞ、ツキがまわってきた! 」と思ったら、どんどんお金をつぎ込みます。

深く酔えない体質だと逆立ちしてもアルコール依存症になり得ないように、ギャンブルにのめり込む人はギャンブル勘が人一倍あります。人一倍あるからはまるわけであり、勘が悪い人はそもそもはまりようがないのです。

ですから、誰しもギャンブルをしながら「これはそろそろ潮時かな」という勘が働きます。金銭欲に徹するなら、そこでやめるというコントロールされたギャンブルができますから、少なくとも大きなマイナスにはならないはず。どれだけ稼げるかはわかりませんが、小遣い銭くらいは残るでしょう。

ところが、そこへ「もっと勝ってまわりをあっといわせたい」とか「負けをとり戻して目にもの見せてやる」といった金銭欲とは違う勝利欲、名誉欲、達成欲のような欲望が入り込むと、ギャンブル勘を狂わせます。

「嫌なことから逃れたい」「仕事のストレスや憂さを晴らしたい」「借金を含めてすべてをリセットしたい」といった現実逃避飲も同様に邪魔をします。金銭欲以外の欲望に妨害されてしまうから、元来優れたギャンブル勘の持ち主である人が負け続けて山のような借金をつくるのです。

こういった話をしながら「他の欲望が邪魔をするのではありませんか? 」と聞くと、「それはそうかもしれませんね」と大半の人は納得します。複数の重なる欲望に気づいてもらうことが、このワークシートの第一の狙いなのです。

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