ギャンブルを禁じない

代替方法を見つける

「ギャンブルの目的=欲望」を重要な順番に並べてもらったら、「それぞれの目的を果たすためにどのような工夫や努力をしてきましたか? 」と聞き出します。そう聞いても、大半の方はただ闇雲にギャンブルをしているだけ。「小遣い(遊興費等) 稼ぎのため」「生活費稼ぎのため」「借金返済のため」といった目的を上位に置く方がほとんどですが、プロのギャンブラー以外の大多数にほ、金銭欲を満たすためのギャンブルは困難ですし、お金を増やすための工夫や努力はアルバイトなどギャンブル以外にいくらでもあります。

この問いは凝虫申ため臨ギ幣ンぎ兆をb ているといいなが島、轟鈍釈奄満た登うとしでいる泥捗で陳ないLとい藩現状奄改め芯綾取しで各島うためのもの准ので黎怨したがって「目的は果たされましたか? 」という問いでは、多くの方が「お金のためにギャンブルをしていると言いながら、「金銭欲を満たそうとしているだけではない」という現状を改めて確認してもらうためのものなのです。

したがって「目的は果たされましたか?」という問いでは多くの方が「はたされてない」という答えになります。

そこで、続く問いでは「さまざまな工夫を試みたにもかかわらず、目的が果たせなくなった理由」を訊ねています。ワークシートにあるように、その理由は「ギャンブルそのものが目的を達成する手段としては不適切なものになってしまった」か「複数の目的を求めたために結果としてそれぞれの達成度が中途半端なものになった」かのどちらかです。

ギャンブルが欲望達成の手段として不適切なものになっているのなら、目的を達成するためのギャンブル以外の代替方法を探します。

金銭欲なら金銭欲、勝利欲なら勝利欲を果たすための、ギャンブル以外の適切な方法を見つけるのです。複数の目的を求めたために結果としてそれぞれの達成度が中途半端なものになったというのなら、目的をひとつに絞ってギャンブルをします。同時に外した目的を達成するために代替方法を探します。いずれにしても、ギャンブル以外の方法で自分の欲望を満たす手段を探していくこのプロセスこそが、欲望充足法の特徴です。

ギャンブルをやめなくてもいい

たとえギャンブルで大借金をこしらえたとしても、「あなたのギャンブル勘は保たれています。複数の欲望を追い求めるあまり、一時的にその優れたギャンブル勘が働かなくなっているだけですよ」と繰り返し伝えます。

ここで本人の自尊心が傷ついて自己価値観が落ちると自暴自棄となり、治療に対して前向きになれないからです。これまでの疾患モデルでは、「ギャンブルにブレーキをかけられなくなったあなたは、ギャンブラーとして失格です。賭け事はもうおしまいにしましょうね。あなたはギャンブルをはじめたら最後、またとことんやってしまうような脳に変わってしまっているのです」などと説明してギャンブルを禁止していました。

脳内でなんらかの変化が起きていることは事実ですが、それをギャンブルをやめさせる目的で本人に伝えても「自分はダメだ」と自己価値観が落ちるだけ。ですから、まずは「ギャンブルする能力は落ちていません。他の欲望がそれを邪魔しないように、お金を増やすためだけに徹してください」と助言しますじ決してギャンブルを禁止しないのです。

もしギャンブルの目的が金銭欲のみであり、純粋に返済のためにギャンブルをしているとしたら、「借金返済に徹したギャンブルをしてください」とアドバイスします。

そして「目にもの見せてやる」とか「勝って終わりたい」とか「はじめた以上は徹底的にやる」といった他の欲望はみんな捨てるように助言するのです。ただし「それができますか?」と聞くと、多くの人は「それじゃあ面白くない」といいます。確かにプロのギャンブラーやパチプロの話を聞いたり本を読んだりしても、金銭欲に徹するギャンブルは仕事ですから全然面白くないらしいです。プロのギャンブラーは仕事としてギャンブルをして、そこに面白みを求めない代わりに、稼いだお金でリゾート地でくつろぐなど、ギャンブル以外で楽しみを求めるのです。

最初は「借金返済」「生活費稼ぎ」など「お金のため」といいながら、突き詰めると「お金のためにやるのはつまらない」と語るのはギャンブルに金銭欲以外のものを求めている証拠です。
最初は生活費、小遣い稼ぎ、学費稼ぎなど金銭欲に徹するギャンブルをしていたかもしれまんが、いつのまにか他の欲望が入り混んでしまうのです。

自分でも気づかない欲望に気づく

欲望充足法の概略とワークシートの説明を終えたところで、その治療法についてさらに詳細を説明します。

初診では、ワークシートについての説明と診察を兼ねて1時間ほど行い、まずは自分の欲望の確認をします。Q1ではギャンブルをはじめた目的、Q2では現在のギャンブルの目的を訊ねます。この目的こそが、その人のギャンブルに対する欲望を表します。

じつは、Q1でギャンブルをはじめた目的を尋ねることには別に大きな意味はありません。「はじめたとき」の目的がなんであろうが問題ではなく、Q1で訊ねる「現在の」目的がポイントだからです。

多くの欲望を抱えているほど混乱して、「自分がなんのためにギャンブルをしているのかわからなくなる」という状態になります。現在のギャンブルの目的を尋ねると多くは「借金を返すため」という答えが返ってきます。のめり込みがある程度進むと、借金をしてまでギャンブルをするからです。

依存するほどのめり込む人の多くは借金を負っています。となると、その借金をいかに返すかで頭がいっぱいになるのです。なにかには追い立てられるように、せっつかれるようにギャンブルをして、たとえ勝ってもそれを全部借金の返済に充て、それでも追いつかなくなる…という人もいます。

そうなってからはじめて受診する人が多いですから、現在のギャンブルの目的と尋ねると「借金返済のため」もしくは「生活費稼ぎのため」と答える人が多いのです。

でも、すでに触れたように金を増やすため、つまり金銭欲のためにギャンブルをしているというのは表面的な思い込みにすぎません。お金を増やすためのギャンブルなら、ギャンブルをする場所や機器をじっくり見極めます。それと同時に「今日はツイてない」と思ったら潔くそこで諦め、逆に「今日はいけるぞ、ツキがまわってきた! 」と思ったら、どんどんお金をつぎ込みます。

深く酔えない体質だと逆立ちしてもアルコール依存症になり得ないように、ギャンブルにのめり込む人はギャンブル勘が人一倍あります。人一倍あるからはまるわけであり、勘が悪い人はそもそもはまりようがないのです。

ですから、誰しもギャンブルをしながら「これはそろそろ潮時かな」という勘が働きます。金銭欲に徹するなら、そこでやめるというコントロールされたギャンブルができますから、少なくとも大きなマイナスにはならないはず。どれだけ稼げるかはわかりませんが、小遣い銭くらいは残るでしょう。

ところが、そこへ「もっと勝ってまわりをあっといわせたい」とか「負けをとり戻して目にもの見せてやる」といった金銭欲とは違う勝利欲、名誉欲、達成欲のような欲望が入り込むと、ギャンブル勘を狂わせます。

「嫌なことから逃れたい」「仕事のストレスや憂さを晴らしたい」「借金を含めてすべてをリセットしたい」といった現実逃避飲も同様に邪魔をします。金銭欲以外の欲望に妨害されてしまうから、元来優れたギャンブル勘の持ち主である人が負け続けて山のような借金をつくるのです。

こういった話をしながら「他の欲望が邪魔をするのではありませんか? 」と聞くと、「それはそうかもしれませんね」と大半の人は納得します。複数の重なる欲望に気づいてもらうことが、このワークシートの第一の狙いなのです。