2020年 1月 の投稿一覧

自閉型の3例

非自閉型の実例1

30歳代 男性Gさん会社員、両親と同居(離婚歴あり)性格:無口

AQテスト:24点
Gさんは高校卒業後、正社員として会社勤めをしています。無口で友人が少なく、人と遊ぶのは苦手なタイプです。12年前、Gさんはパチンコをはじめますが、負けが続くようになって1年あまりでやめました。

しかし8年前、会社の同僚に誘われて、週1回ペースでパチンコ店に通うようになります。そんなGさんでしたが、勝ったときの喜びはすぐに軽減しました。そして、負けが込んできたにもかかわらず、毎日パチンコに通うようになります。

間をおかず結婚して子どもを授かりますが、3年後には消費者金融で借金をするよぅになりました。「疲れるだけなのに、なぜ自分はパチンコをするのか」と自問自答しながらも、通い続けます。

「勝ちたい」という自覚はなく、「ただパチンコにお金をつぎ込むだけのロボットだった」とGさんは語っています。

2年前、パチンコによる借金が妻に露見するかもしれないという恐怖から、死ななければならないという「希死念慮」が出現。うつ病との診断で会社を半年間休職しましたが、その間もパチンコ通いは続きました。

1年前、350万円の借金が露見、離婚。両親のすすめで、精神科を受診します。受診後、「パチンコをしたい欲求が出ると、したくてたまならなくなる」という強い衝動は2ヶ月ほどで軽くなりました。

自助グループへも参加しましたが、「苦しかったことを話すと楽になる」と語る一方、半年間参加したのみでドロップアウトしてしまいます。しかし、パチンコができない物足りなさはなく、「他人に嘘をつかなくていい」「仕事、運動、食事、睡眠という一定した生活リズムができる」ことの喜びを語ります。

3年後、Gさんは「パチンコをする前と同じ静かな生活です」と語り、ギャンブルの衝動は消え去って安定しています。

非自閉型の実例2

30歳代 男性Hさん、会社員をへて無職、妻子と同居、性格:内向的

AQテスト:24点
専門学校卒業後、正社員として会社勤めしていたHさん。幼いころから食事や服装などは同じもので満足するなど、手のかからない子どもだったといいます。また、集団でなにかにとり組むのは苦手なタイプで、友人はあまりいませんでした。

17年前、Hさんはちょっとしたきっかけでスロットをはじめます。1日中ぼんやり過ごせることに、いままでにない安らぎを感じ、3年後にははぼ毎日スロットに通い詰めるようになります。ときには会社を休んでいくこともありました。

スロットの話題で職場の同僚との交流ができるようになり、スロットをすることがすっかり生活リズムの一部となり、いっそうのめり込むようになりました。

9年前から消費者金融で借金をするようになり、5年前には支払い不能に。両親に150万円の借金を立て替えてもらいました。ところが、1ヶ月後にスロットを再開し、ほどなく消費者金融で再び借金をするようになります。前後して結婚をして、子どもにも恵まれました。

そして、2 度目の借金が400万円にのぼることが会社にバレて、自暴自棄となって会社を自主退職し、受診となりました。

H さんは「スロットをしたい気持ちはあるけれど、やったらまた元に戻ってしまう」と思っています。その後、Hさんは強いギャンブル欲求は出ないまま、主夫として家庭で家事や子育てをしながら、淡々と現実を受け止め続けます。
1年後、「スロットができないつらさについては、深く考えないようにしています。

スロット以外になにかハマるものが欲しいと思うけれど、とくにないというものの、そこに深刻さは感じられませんでした。間もなくアルバイトをはじめました。

3 年後、「スロットをしたい気持ちはまったくないです。いまはお金のありがたみを感じていて、少しでも子どもになにか買ってあげたいと語る一方、「(迷惑や心配をかけた埋め合わせとして)妻になにか買ってあげたいという気持ちにはならない」と悪びれずに語っていました。

非自閉型の実例3

40歳代女性Iさん主婦(夫、子ひとりと同居)性格:物静か

AQテスト:29点
Iさんは大学卒業後、正社員として会社勤めをしましたが、結婚後は専業主婦となり、受診時にはパートタイムで働いていました。

物静かな性格の女性です。17年前、友人に誘われてパチンコをはじめました。その後、結婚してからは夫とも一緒にパチンコ店にいくことがあったそうです。8年前、1 回のパチンコで10万円勝ちました。「これまでの人生でいちばんの興奮体験だった」といいます。

これが契機となり、自分だけの世界に入り込めるパチンコに喜びを感じるようになりました。その後はどっぷりとはまり、妊娠中や出産後にも、毎日通うようになりました。

6年前、30万円の借金が発覚。その借金が4年前には360万円まで膨らみ、夫と実父が立て替えました。その際、天から「パチンコをやめないと離婚する」と宣告されますが、3ヶ月後には再開。その後も、借金、立て替え、天からの叱責が繰り返されながら、借金は990万円にまで膨らみました。

夫から責められることで自殺念慮やギャンブル衝動が生じ、パチンコに負けると吐き気をもよおすようになりました。それでもIさんはパチンコ店に通い続けました。「やめたいけど、やめられない」と思っていましたがその口調にはどこか淡々としたところがありました。
通院と自助グループへの参加で半年間が経過。そのころから「パチンコにいきたくなる欲求はなくなりました。なぜあんなにパチンコばかりしていたのか、自分でもわからない」というようになり、1年がたつころには自助グループからも足が遠のきました。

このころには「パチンコのことを考えても、どこか投げやりです」とパチンコに没頭していたときの自己感覚が希薄になっていました。その後、「パチンコをしていたときは、なにかいつも気が張っていましたが、いまは空気の抜けた風船のようで楽です」と落ち着いて語れるようになりました。

4年後には、「消費者金融のチラシを見ていたら、唐突に『また借りてしまうのではないか』という不安がよぎりました。そういう不安(借金への予期不安)を持つ自分に対して、『ギャンブル依存の後遺症だね』と醒めた目で見ている別の自分がいます」と冷静に、そしてどこか自分を突き放すようにIさんは語っています。

非自閉型の3例

ここから非自閉型と自閉型に分けて、それぞれ3例を紹介していきます。まずは非自閉型グループのケースからです。

非自閉型の実例1

40歳男性Dさん会社員、息子と同居。性格:神経質

AQテスト:14点
Dさんは大学卒業後、正社員として会社勤めをしています。性格は神経質であり、完全主義的な傾向が見受けられました。ギャンブルをはじめたのは26年前。友人に誘われてパチンコをはじめたのがきっかけでした。

その後しばらくして競艇をはじめます。15年前からは、会社での営業成績が伸びない苦痛を和らげるために、競艇に通う頻度と賭け金が増加。ほどなく借金をするようになりました。

2年後には支払い不能となり、両親に400万円を立て替えてもらいました。そのころDさんは結婚をしていますが、ギャンブルは続きます。6年前には1000万円の借金が返せなくなり、民事再生で200万円に減額。

そうやって、なんとか返済しました。それでもDさんはギャンブルをやめませんでした。そして、3年前、会社の預かり金(10万円)を使い込み、精神科を受診。

「負けをとり戻したい一心でした。今後は一刻も早く埋め合わせをして、償いをしたい」と語ったDさん。通院と自助グループへの参加をはじめましたが、すぐに中断してしまいました。1年後、Dさんは仕事の失敗で20万円の損害を出します。それを埋め合わせるため会社のお金を使い込み、再びギャンブルをした結果、損出額が500万円に膨らんでしまい、子どもの学資金の転用と借金で埋め合わせました。

Dさんは周囲からの非難の声に耐えられなくなり、自殺を図ります。幸い未遂となり、精神科の再受診となりました。そこでD さんは「妻から責められています」「自分のしたことなので、一度は死んだ身として耐えるほかない」「借金の支払日にはギャンブルをしたくなります」と苦しそうに、そして諦めたように語りました。
それから自助グループへの参加と通院を再開。3年後、息抜きとしてネットカフェを利用し、現在はギャンブルをやめています。

非自閉型の実例2

50歳男性Eさん会社員、妻子と同居、おおらかな性格

AQテスト:14点
Eさんは高校卒業後、正社員として会社勤めをしています。大らかで気前のよい性格です。ギャンブルをはじめたのは 30年はど前。仕事の息抜きとしてパチンコ店に通うようなり、20年ほど前からは毎日通うようになりました。このころ、結婚をしています。

10年はど前からは、会社から給料の前借りをするようになり、その後、消費者金融からの借金もはじめました。3年前、200万円に膨れあがった借金が支払い不能となり、債務整理をしました。しかし、債務整理の3週間後にはギャンブルを再開。

1年前には借金が500万円にまで膨らみ、精神科を受診しました。Eさんは「パチンコで勝ったとき、まわりの客に注目されるのがうれしかった」「どうにでもなれ、というやけっぱちな考えと、どうにかなる、という甘えた考えがあります」と語りました。

その後、自助グループに定期的に通うようになり、暇なときや妻と口論したときなどにギャンブル欲求が出るものの、パチンコに通うことはなくなります。1年前、「自助グループでも自分を飾っている」「仕事への飲も減ってきた」「モヤモヤしたむなしさがある」と語りました。

それから3年後、自助グループで回復プログラムにとり組み、「相手に恩を売って、大物ぶりたいのが自分の本性でした」「抑圧的だった両親への反抗心があったのかもし臥れません」と自己洞察を深めます。それから自分の「棚卸し」のために自分史をつくり、見せてくれました。そこには「大人になれない私」というタイトルがつけられていました。現在、Eさんのギャンブル欲求はほとんどなくなっています。

非自閉型の実例3

30歳男性Eさん会社員、独身、まじめな性格

AQテスト:19点
Fさんは大学卒業後、正社員として会社に勤務しています。生まれつき真面目で、まわりに合わせる性格です。そんなFさんは20年ほど前からパチンコをはじめ、10年はど前にはほぼ毎日通うようになりました。すると生活費が不足するようになり、消費者金融で借金をするようになりました。

でも、Fさんは「いままで“よい子”でやってきたから、少しは楽しんでもいいだろう」と内心思っていたそうです。ときを同じくして、ある女性と交際しましたが、ささいなことから攻撃的になる面を敬遠されて交際は長続きしませんでした。

その苦しさから逃れるために、さらにパチンコへ傾倒することになります。I6年前、400万円の借金が支払い不能となり両親に立て替えてもらいましたが、すぐにパチンコを再開。その後、闇金(非合法の貸金業者)にも手を出します。

3年前には、再び借金が500万円となり、自殺念慮(自殺したいという強い思い)が出てきて精神科を受診。

Fさんは「いままで生きてきたなかで、パチンコは一番熱中できるものです」「嫌なことを忘れさせてくれます」と語る一方、「最近は借金を返すためにパチンコをしているので、もう楽しめない」と話してくれました。

そして「これ以上親を困らせてはいけないと思うと、かえってパチンコをしたくなる」と語り、ギャンブル癖と両親への両価的感情との関連がうかがわれました。

とくに母親への憎悪を“自らを責め続ける敵” と表現しました。
受診後もパチンコはとまらず、自殺願望が強まったため、3ヶ月後入院。両親への攻撃性が自己へ向かい、自らを罰したいという衝動となり、それが破滅的なギャンブルへ転化してぃると推測されましたから、「集中内観療法」を実施。

その結果、母親は「押しつけがましいのではなく、子ども思い」であり、父親は「頑固なのではなく、不器用だが優しい」という認知の変化が見受けられました。

その修正によって、ギャンブルの衝動は半減しました。1年前、Fさんは「自分だけがつらいと思っていた」と語り、自助グループへ通っています。ギャンブルの衝動は軽度ながら出没していますが、パチンコ通いはやめています。

自閉症スペクトラム自己診断基準

次の50問に

  • 1=そうである
  • 2=どちらかといえばそうである
  • 3=どちらかと言えばそうでない(違う)
  • 4=そうではない(違う)
    1. 何かをするときには、1人でするよりも他の人と一緒にするはうが好きだ。
    2. 同じやり方を何度も繰り返し用いることが好きだ。
    3. 何かを想像するとき、映像(イメージ) を簡単に思い浮かべることができる。
    4. 他のことがぜんぜん気にならなくなる(目に入らなくなる)くらい、何かに没頭してしまうことがよくある。
    5. 他の人が気がつかないような小さな物音に気がつくことがよくある
    6. 車のナンバーや時刻表の数字などの一連の数字や、とくに意味のない情報に注目する(こだわる) ことがよくある。
    7. 自分では丁寧に話したつもりでも、話し方が失礼だと周囲の人からいわれることがよくある。
    8. 小説などの物語を読んでいるとき、登場人物がどのような人か(外見など) について簡単にイメージすることができる。
    9. 日付についてのこだわりがある。
    10. パーティや会合などで、いろいろな人の会話についていくことが簡単にできる。
    11. 目分が置かれている社会的な状況(自分の立場) がすぐにわかる。
    12. 他の人は気がつかないような細かいことに、すぐに気づくことが多い。
    13. 作り話には、すぐに気がつく(すぐわかる)。
    14. text
    15. モノよりも人間のほうに魅力を感じる。
    16. それをすることができないとひどく混乱して(パニックになって)しまうはど、なにかに強い興味を持つことがある。
    17. 他の人と、雑談などのような社交的な会話を楽しむことができる。
    18. 自分が話をしているときには、なかなか他の人に横から口を挟ませない。
    19. 数字に対するこだわりがある。
    20. 小説などを読んだり、テレビでドラマなどを観ているとき、登場人物の意図をよく理解できないことがある。
    21. 小説のようなフィクションを読むのは、あまり好きではない。
    22. 新しい友人を作ることは、難しい。
    23. いつでも、物事のなかになんらかのパターン(型や決まりなど) のようなものに気がつく。
    24. 博物館に行くよりも、劇場へいくはうが好きだ。
    25. 自分の日課が妨害されても、混乱することはない。
    26. 会話をどのように進めたらいいのか、わからなくなってしまうことがよくある。
    27. 誰かと話をしているときに、相手の話の「言外の意味」を理解することは容易である。
    28. 細部よりも全体像に注意が向くことが多い。
    29. 電話番号を覚えるのは苦手だ。
    30. 状況(部屋の様子やものなど)や人間の外見(服装や髪型) などが、いつもとちょっと違っているくらいでは、すぐには気がつかないことが多い。
    31. 自分の話を聞いている相手が退屈しているときには、どのように話をすればいいかわかっている。
    32. に2 つ以上のことをするのは、簡単である。
    33. 電話で話をしているとき、自分が話をするタイミングがわからないことがある。
    34. 自.分から進んでなにかをすることは楽しい
    35. 冗談がわからないことがよくある。
    36. 手の顔を見れば、その人が考えていることや感じていることがわかる。
    37. 邪魔が入ってなにかを中断されても、すぐにそれまでやっていたことに戻ることができる。
    38. 人と雑談のような社交的な会話をすることが得意だ。
    39. 同じことを何度も繰り返していると、周囲の人からよく言われる。
    40. 子どものころ、友達と一緒に、よく「●●ごっこ」(ごっこ遊び) をして遊んでいた。
    41. 特定の種類のものについての(車について、鳥について、植物についてのような) 情報を集めることが好きだ。
    42. あること(もの)を、他の人がどのように感じるかを想像するのは苦手だ。
    43. 自分がすることはどんなことでも慎重に計画するのが好きだ。
    44. 社交的な場面(機会)は楽しい。
    45. 交的な場面(機会) は楽しい。
    46. 新しい場面(状況 に不安を感じる。
    47. 初対面の人と会うのは楽しい
    48. 社交的である
    49. 人の誕生日を覚えるのは苦手
    50. 子供と「●●ごっこ」をして遊ぶのが得意。
採点方法
項目、2、4、5、6.7、9、12、13、16、18、19、20、21、22、23、26、33、35、39、41、42、43、45、46は1か2に○をつけた場合に1点、それ以外の高億は3か4に○をつけた場合に1点として集計する。

は50点満点で成人健常群の平均値は17~20点といわれていますが、点数が高くなるほど自閉症的な傾向が強くなります。
ギャンブル依存の方にはこのAQテストを行い、平均点以上の自閉型と平均点以下の非自閉型の2つの群に分けてそれぞれの特徴を分析します。