非内因性うつに薬は効きにくい

欲望がはっきりしないのに自分探しをしても、なにかが見つかるわけがありません。
「これは自分には合わない」「これもなにか違う」ミスマッチを繰り返していると誰
でも気分がうつうつとします。そうやって「ネガティブ思考になる」「朝起きられない」
という状況に陥ります。

そういう状態で精神科クリニックを受診して、「仕事がつらいです」「なにをしても
張り合いを感じられません」などと訴えると、「それはうつ病だから、薬を飲んで2
ヶ月くらい休みましょう」などと診断されます。
医師から診断書を書いてもらい、いったん休養すると復活したように思えます。

そして、今度こそ自分の好きなことをやろうと張り切って自分探しをはじめるのですが、
再び生きる目的が見当たらないという課題にぶつかります。

そして2ヶ月ほどたつと、また気分がうつうつとしてきて、精神科クリニックに逆戻り。病気療養継続2ヶ月という診断書をもらう… 。

この繰り返しで非内因性うつが形成されていきます。非内因性うつは、うつ病の薬を飲んでも、内因性うつのような効果はありません。

非内因うつでも脳のエネルギーは減っていますが、それは自分探しをしてもやりたいことが見つからないから結果的に落ちているだけ。

脳のエネルギーの涸渇がうつ病発症の本当の原因ではなく、欲望がはっきりしないことが原因なのです。

医師もうつ病と診断した以上は治療薬を出さないと格好がつきませんが、抗うつ薬は一度飲み出すとやめにくく、いまあちこちで問題になっています。

効果が出るまでに一定の時間がかかる – うつ病

複雑な「非内因性うつ」が増えている

無気力な若者たちに多い将来展望喪失型には、うつ病も含まれています。うつ病には、大別して「内因性うつ病」と「非内因性うつ病」の2 つがあります。

「内因性うつ」という従来型のうつ病は、脳のエネルギーがダウンして意欲が低下した状態です。クルマでいうならガソリンが不足しているだけのことです。そのため内因性うつは、かつての結核と同じように一定期間療養すれば、別に薬を飲まなくても治ります。食べて寝てゴロゴロしていれば、脳のエネルギーが補給されるからです。

ここでいうエネルギーとは、糖質や脂質といったいわゆるエネルギー物質ではなく、「セロトニン」や「ドーパミン」といった脳内の神経伝達物質のことです。

加えて現代にはセロトニンを増やす「SSRI」などのうつ病の薬があります。これを1〜2 カ月摂取して一気に神経伝達物質を増やせばより早く治ってしまいます。

セロトニン濃度を高めるSSRI – うつ病

ですから、内因性うつを発症してしまったら病気療養が必要であるという診断書を医師からもらって会社の人事部に提出。

薬を飲みながら2ヶ月はどゴロゴロして、好きな映画でも観て休んでいればス〜ツと気分が楽になり、元気に職場復帰することができます。

一方、やっかいなのが「非内因性うつ」です。「現代型うつ」「実存うつ」などとも呼ばれています。このタイプのうつは、ギャンブル依存症以上に生きる意味を見失い、自分の欲望の充足法がわからなくなっていることが特徴です。

よく見受けられるのは、まわりに流されたり親にいわれたりして有名大学を出て大企業に勤めているというタイプの人。こういう人は、ちょっと壁にぶつかると「なにか違う… 。自分の生きる意味は他にあるのではないか」などと考えたりして、「自分探し」という恐ろしいワナにはまります。それが非内因性うつを発症するきっかけ
となるのです。

主婦にも多い現実逃避型

若者に多い「将来展望喪失型」を紹介しましたが、非正規雇用は全雇用者の38 % にも及び、男性の非正規雇用の平均年収は168万円、月収は14万円ほど です。

月収14万円のフリーターが稼いだお金を全部ギャンブルに使って達成欲と現実逃避欲が得られたとしても、その対価として月々10万円も差し出すくらいなら、もっと他に安価で合理的な現実逃避のための手段はあるでしょう。

例えば、好きなゲームや漫画本を大人買いして、その世界にどっぷり浸るという手もあります。ゲームや漫画本を大量に買って楽しみ、飽きたらインターネットのオークションサイトなどで売って、次の軍資金に充てるということを繰り返していくのも一手です。
ゲームや漫画本の大人買いにしても、月々10万円もいらないでしょう。月収14万円なら残り4万円は将来のために貯金をしたり、パラサイトしている親に食事代として渡してあげたりすることができるようになります。

そして、若年層以外にも、主婦が現実逃避欲でギャンブルに依存するケースも少なくありません。夫とのすれ違いや子育てのストレス、姑との軋轢などから一時でも逃れたいという一心で、ギャンブルに逃避するのです。
こういう主婦にも、ギャンブル以外で現実逃避できるものを考えなければいけません。カラオケや通信講座もいいですし、市民講座やカルチャーセンターに通ったり、余暇を活用してボランティア活動をしたりするのもよいでしょう。とにかく、他に夢中になれるものを探してみましょう。