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「当選確率」と「運」の過大視 ボールペンで財産線を手のひらに描く人も

疾患モデルに従うと、ギャンブル依存症の治療では、渇望感の元凶となるギャンブルを徹底的に断つしかなくなります。断ギャンブルには、

  1. 心理的
  2. 生物学的
  3. 実存的

と3 つのアプローチが有効だといわれています。

順番に説明すると、心理的アプローチでは、「認知行動療法プログラム」がもっとも効果的とされています。認知とは「物事の捉え方」で、その偏りや歪みを修整するプログラムです。

ギャンブル依存症における特徴的な物事の捉え方の歪みには、「当選確率」と「運」の過大視という2つの側面があります。

ルーレットで黒が3 、4 回続くと「次は赤だろう」と思いがちですが、黒か赤の2つしか選択肢がないなら、黒が出る確率も赤が出る確率もつねに2分の1。

それなのに「黒が続くと赤が出る確率が高くなるから、そこに賭ければひと儲けできる」と思い込むのが、 当選確率の過大視です。そんな風に思ってしまう心当たりがある人も多いはずです。

さらに、手相を見ていわゆるギャンブル線や財産線を見つけたりすると「他の人より自分は運がよいはずだから、いつか絶対に大儲けできるはずだ」と思い込んでギャンブルにのめり込むのが、運の過大視です。

なかには、ボールペンで財産線を手のひらに描いた日にたまたま大当たりをしたことから「やはり財産線のど利益は本物だった!」と思い込み、財産線を描き続けて負け続ける人もいます。

アメリカ精神医学会の診断基準にあるように「賭博の損失を賭博でとり戻そうとする」のも物事の捉え方の歪みの表れといえます。短期的には勝てる可能性もありますが、プロのギャンブラー以外は、長い目で見ると賭け事で収支がプラスに傾くことはあり得ません。

そうでなければ、ギャンブルというビジネスモデルは成り立たないでしょう。こうした認知の歪みは修正しないよりは修正したはうがよいでしょうが、修正してもしなくても回復率は変わらないという報告もあります。

次の生物学的アプアプローチの中心になるのは薬物療法。ギャンブル脳の興奮を抑えようというものです。薬物療法には抗うつ剤としても用いられる「SSI」(選択的セロトニン再とり込み阻害剤)、気分安定剤の「リチウム」、抗てんかん薬の「トピラマート」などが、適応外使用ですが用いられることがあります。
抗うつ薬・精神薬はこちら。

しかし現時点では、断ギャンブルを維持できた人の割合が偽薬を用いるプラゼボ群と比較して有意に高い薬物は存在しません。つまりギャンブル依存症の特効薬はないということです。最後の実存的アプローチとは、ギャンブルを必要としない生き方への転換を促すものです。

これは倫理的・道徳的な圧力をギャンブル依存症者に課すことになり、根本的な価値観の転換が求められるため、強い心の痛みをともないます。医療で最優先すべきなのは本人の苦痛の除去ですから、実存的アプローチはその戦略に反する部分があるといわざるを得ないでしょう。

ざっと見るだけでも、疾患モデルを根拠とした断ギャンブルに向けた介入は必ずしも成功していないことがわかります。そもそも疾患モデルでは依存症患者は脳がギャンブル脳に変化してしまい、ギャンブルをしたいという欲求が抑えらないと定義しているのですから、脳に効く特効薬がない現状ではその人に断ギャンブルを強いるのは矛盾しているわけです。

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