離婚せずにいる理由がわかっていない

依存症者を夫に持つ妻の多くは「別れない理由」を必死に探しています。別れない理由は、「子どもがまだ小さいから」「子どもが結婚前だから」「子どもが結婚したから」「孫ができたときにおじいちゃんが居たほうがいいから」「年寄りの面倒を見ないといけないから」「家が共有名義だから」などと次から次と出てきます。

これでは死ぬまで離婚できません。専業主婦で無職の場合、離婚してひとりでは生活できなくなるというのは深刻な問題ですが、そうなると生活保護を申請してもらうしかありません。安いアパートを借りてひとり暮らしで生活保護をもらい、足らない部分はパートをするという暮らし方は、現在の日本ではギリギリ可能だと思います。

夫のギャンブル依存をつねに気にして、借金に苦しみながらビクビクして生きる人生より、パート先で慣れない仕事に苦労してでも、自分の力で生きていくほうが精神的にずっと楽だと思います。

そう考えると別れない理由はないのです。そんな話をしていると「私はなぜこの人と一緒にいるんでしょうか? わからなくなってきました」と妻がいい出します。そんなときには、「そうでしょ、よくわからないでしょう」とかえしましょう。

今度やったら今度こそ「離婚する」「別れる」は甘えさせるだけ

夫のギャンブル依存症で困っている妻のなかには、離婚届を書いてそれを歯止めにしてもらうという手を使う人もいます。

「あなたが今度ギャンブルに手を出したら、無条件で離婚します」などと一筆書き、日付を空欄にして夫に署名捺印してもらうのです。あとは妻が名前を書くだけで有効になるようにしておいて、金庫なりタンスなりにしまっておくという方法です。

ところが、夫が約束を破ってギャンブルに手を出したら実際に別れるかというと、そんなことはありません。

多くの依存症の方を見ているとこの方法で別れた実例はほとんどありません。本気で別れるつもりなら「別れたい」と思ったその日に役所にいって離婚届を出すなり、あるいは相手が「別れたくない」というならすぐに調停をかけないとダメです。

中途半端な脅しは、「どうせ別れないくせに」と依存症者に高をくくらせ、甘えさせるだけで依存症者の家族や周囲の人たちが、ギャンブルをやめられる状況をつくることは大切なことですが、それでもギャンブルを必要とする状況は周期的にやってきます。

そんなときに「今度やったら離婚するよ! 」という脅しは歯止めにならないのです。もしどうしても脅したいのなら、「ただちに自助グループへいけ! 病院へいけ!裁判所へいけ! もしいかないなら、私が具体的な行動をとってあなたの面目を丸つぶれにしてやる! 」と啖呵を切るくらいの覚悟がいります。

その場合、妻は夫と一緒にその泥を被る覚悟が不可欠。それくらい腹をくくって脅すのなら有効だと思いますが、行動をともわないただの脅しは相手に「まだまだ大丈夫だな」と思わせるだけです。

ですから、夫のギャンブルに悩む妻が離婚届をわざわざ書く必要はありません。「本当に別れたいと思ったら別れよう」と心に刻んでおけばそれでいいのです。中途半端な脅しを繰り返していると、依存症者は「自分は嫌われている。愛されてない。いつ離婚されるかわからないし、自分のことを認めてもらえてない」という不安と恐怖にさいなまれます。

すると家庭にいでも安らぎが得られませんから、ギャンブルに癒やしを求めるという、悪循環に陥ります。

妻にとっても、亭主が嘘をついてギャンブルをしていないかどうかを、うの目たかの目で見張る生活が続きますから、どちらも無用な緊張感と苦痛を味わうだけです。

たとえ家族でも依存症者の心理は理解できないもの

ギャンブル依存症の本人よりも家族のほうが苦しいというケースは多々あります。そんな家族に精神科医などは「彼らは病気だから仕方ありません。それを理解してあげましょう」といういい方は無用な苦しみを生んでしまいます。

基本的にはなんとか家族のギャンブル依存症を治したい!そして理解しょうと一生懸命です。それでも依存症本人の歪んだ心を理解するのは非常に困難です。

金輪際ギャンブルには手を出さないと誓った舌の根も乾かないうちに、子どもの貯金箱を壊したり、学資保険を無断解約したりして、いそいそとギャンブルに出かけていきます 。

ギャンブルで大損するたびに「どめんなさい、すみません、もうしません」と泣いて謝るのに、しばらくおとなしくしていたかと思ったら、また同じことの繰り返し… 。

いくら家族でも、こんな心情を理解しょうとしても無理なのです。古典的な時代劇に出てくる丁半博打にウツツを抜かす悪い父親のように、妻や子どもを足蹴にして堂々とギャンブルにいくならまだ理解もできますし、諦めもつきます。そうなるとバカバカしくてつき合い切れないと覚悟もつきますから、迷いなく離婚などの決断ができます。

そうではなくて「ごめんなさい、すみません、もうしません」などと泣いて真剣に謝るのですから、その不可解さを理解しろといっても無理です。自分の夫でも妻でも子どもでも親でも、依存症者の内面をうかがい知るのは難しいのです。