血液をろ過し尿をつくる腎臓の糸球体が炎症を起こして発症する病気で、正しくは糸球体腎炎という。一般には一年以内に治る急性腎炎と、それ以上続く慢性腎炎に分けられる。

急性腎炎

すべての年代に発病するが3~12歳の児童に最も多く、年齢が上がるにつれて減少する。最近では感染症の減少、抗生物質の進歩で減少している。

症状

むくみと血尿、高血圧がおもな症状だが、たんばく尿や乏尿、全身の倦怠感、微熱、頭痛などいろいろな症状があらわれる。
かぜや扁桃炎などの2~3週間後から倦怠感や食欲不振を伴った血尿があらわれ、尿の量も減少する。血尿は目で見てすぐわかる場合もあるが、顕微鏡などで観察しないとわからない、かすかな血尿も多い。

むくみは顔、とくにまぶたにあらわれることが多く、しだいに手足や腹、胸、陰のうなどに広がることもある。また高血圧がみられるのは発病後2週間以内がほとんどで、初期のうちに医師の診察を専へけると血圧が上昇していることがわかる。

このほか、たんばく尿もほとんどの急性腎炎にみられる症状だが、その程度はさまざまで、尿たんばくが多いときにはネフローゼがあらわれる。なお急性腎炎には糸球体に炎症が起きているのに、臨床的にはまったく症状のない無症候性急性腎炎や、腎炎による尿の異常のうちの一部またはひとつだけがあらわれ、すみやかに治る単一症候性急怪腎炎など、さまざまなパターンがある。

なかでも急性進行性腎炎は、発病すると、とどまることなく腎機能が低下し、数週間から数か月で腎不全に陥る危険病気である。

原因

溶連菌の感染により、扁桃炎や咽頭炎、かぜなどの上気道の炎症が起きると、そこで生じた毒素が血液によって腎臓に運ばれる。そして、その毒素(抗原) に対抗する抗体との間に抗原抗体反応が起こり、その結果として腎炎が発病する。

腎炎の原因となる病気としては、上気道の感染がおもだが、ほかに皮膚の化膿や中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、猩紅熱などから発病することもある。なお、感染を受けても腎炎にならない人もおり、腎炎になるかどうかは体質が関係していると考えられる。

経過

子どもの場合はほとんどが自然に治り、良好な経過をたどるが、成人の場合は一部が慢性腎炎に移行することもある。以前は発病の急性期にに心不全や脳・中枢神経障害、妹毒症などを併発して死亡するケースもみられたが、現在ではこうした重い合併症はほとんどみられなくなっている。

検査

おもに尿検査、血液検査、腎機能検査が行われ、ほとんどの場合はこれで診断することができる。また、ときに腎臓の組織の一部をとって検査する腎生検が行われることもある。これは腎炎の診断法としては最も確実な検査で、治療方針を決めたり、予後を知るうえで重要な手がかりとなる。

治療

症状の強い急性期には、入院が必要である。そしてベッドで安静にし、からだを暖かく保つようにする。これは血管の緊張をほぐして腎臓へ十分な血液がいくようにすることで、弱っている腎臓を保護するためである。安静期間は症状によって違うが、基本的には血尿や高血圧など腎炎の症状が消えるまでで、1~2ヶ月がふつう。

急性期が過ぎると自宅療養に切り替える。そして午前と午後それぞれに1時間ほど床から離れるようにし、最初は1週間ごと、その後は二週間ごとに通院して尿に異常のないことを確認する。異常がなければしだいに運動量を増やし、退院後、一か月ほどから半日登校や半日勤務を始め、さらに2週間ほどのちから全登校、全日勤務へと移る。また腎臓の機能が正常に戻ってからも尿に微量のたんばくが出たり、かすかすかな血尿があらわれたりすることがあるが、そうした場合でも退院後、1ヶ月ほどからは離床するようにし、半年後からは学校や職場へ復帰するというペースが基本。
なお薬物療法としては、先行感染に対して抗生物質が用いられるほか、むくみや甘桝血圧などの症状に対しては利尿剤や降圧剤などが使用される。

慢性腎炎

たんばく尿や血尿などの尿の異常または高血圧が、1年以上持続しているものを慢性腎炎という。

症状

おもな症状は急性腎炎と同じく、むくみ、血尿、高血圧、たんばく尿である。ただ症状のあらわれ方は、自覚症状のないものから、腎機能が低下して腎不全まで進行し、頭痛やけいれんなど尿毒症の症状を示すものまでざまざまである。
一般に、症状に気づかず、健康診断などの尿検査でたんばく尿や血尿が見つかって診断されるケースが多い。また、高血圧や高度のたんばく尿、肉眼的血尿などネフローゼ症候群と同様の症状がみられることもある。

原因

急性腎炎から移行するものもー部に認められるが、それ以外は発病時期が不明のことが多い。また、原因はよくわかっておらず、免疫と免疫以外の要因が複雑に組み合わさって発症し、進行すると考えられている。免疫以外では糸球体過剰ろ過、糸球体高血圧、血小板や凝固線溶系の異常などが関与していると考えられる。

経過

期間や進行速度は異なるものの、悪化して腎機能が低下し、ついには腎不全や尿毒症を併発する予後不良の経過をたどるものと、進行がゆっくりで長年にわたって尿の異常が続いても腎機能が低下しない場合や、自然に軽快する予後良好のケースもある。

治療

尿の異常以外に自覚症状もなく、腎機能も正常な潜伏期の場合なら、定期的な外来検査と生活の注意だけでとくに治療は必要ない。
活動期で腎機能の低下が認められる場合には、病状に応じた食事療法と生活管理を行った上で、症状を抑える薬を使用することによって、かなり進行を防いだり遅らせることができる。