胸が痛い

胸膜炎・膿胸

胸膜(以前は肋膜といわれた) に起こった炎症をいい、胸膜腔に浸出液がたまることが多い。炎症の程度により、乾性胸膜炎、滲出性胸膜炎、膿胸に分けられ、膿胸は胸膜腔にたまった水が化膿菌を含んで膿性の状態をいう。2歳以下の乳幼児に多い。

症状と原因

肺炎に続いて起こることが多く、肺炎の症状に加えて、胸痛がある。

刺されるような鋭い痛みで、深呼吸やせきをすると、さらに痛みは強くなる。痛みがひどいときは、呼吸による動きを少なくしようと、炎症を起こしている側を下にして寝ている。肺炎の経過中に顔色がますます青白くなる、熱が下がらず、食欲不振が続き元気がなくなるなどの症状が出たら、胸膜炎の恐れがある。

胸水がたまると胸痛は消えるが、大量にたまると呼吸困難を引き起こす。結核、リウマチ熟、外傷、まれに胸腔内の悪性腫瘍などから起こる場合もある。リウマチ性では心膜炎や漿膜炎を併発することが多く、熱が高く、胸痛も激しいが経過はよい。1~2週間で熟は下がり、液も吸収されて完治する。

検査と治療

胸部X線、超音波、CTスキャンなどによる検査のほか、胸膜腔に試験穿刺して港出液を検査し、原因を確かめる。原因となっている病気の治療が根本となるが、栄養価が高く、消化のよい食事を与え、癒着防止のための体位変換を行うこともある。
対症療法としては、胸痛に対して鎮静剤などを用いる。胸水の性質によっては、チューブを胸腔内に挿入する場合もある。

予防

肺炎から胸膜炎へ進展させないようにすることが予防の第一。したがって、肺炎にかかったときは、完全に治るまで安静につとめ、栄養に気をつけながら十分な治療を受けることを怠ってはならない。
ブドウ球菌による肺炎の経過中は、十分な治療を受けていても膿胸を起こす場合がある。万一、膿胸を起こしてしまったら、胸膜にたまったうみを早めに出し、抗生物質の服用による治療が行われる。肺炎と同じく、栄養状態を悪くしないように心がけることも大切である。

肺炎

かつては乳児の死因のかなりの割合を占め、たいへん恐れられていたが、現在は早期に的確な治療さえ行えば、それほど恐ろしい病気ではなくなってきている。

症状

3~4日、かぜの症状が続いたあと、高熱が出る。たんを伴い、呼吸や脈拍が速まり、小鼻をピタピタさせて苦しそうに呼吸をする。
呼吸のたびにみぞおちのあたりが陥没することもある。

また原因となる細菌やウィルスによっては、下痢、嘔吐、けいれん、チアノーゼなどの症状もあらわれる。新生児や未熟児では、熱を伴わずに発病(無熱性肺炎)することもある。

原因

マイコプラズマという病原体による肺炎が20~50% 、ウィルスによる肺炎が20~30% 、残りが細菌性肺炎と考えられている。

治療

重症の場合は入院し、抗生物質を服用する。脱水症状や呼吸困難に対しては、輸液や酸素吸入が行われる。たとえ重症でも、入院して安静を保ち、適切な治療を受ければ命を落とすようなことは少ない。

しかし、月齢の低い乳児や、心臓病などほかの病気をもっている子どもでは重症化しやすい。

生活の注意

薬をきちんと飲ませ、安静を保つことが大切。呼吸しやすく、たんも出やすいように、ときどき上体を高く起こしてやるとよい。汗をかくのでのでこまめに下着を替え、からだをふいて清潔を保つ。また、室内の換気に気を配ると同時に、空気が乾燥しないように加湿し、体温にも十分な注意が必要。食事は、消化がよく、栄養価の高いものを与え、水分を十分にとらせる。ただし、食欲が低下しているので、少量ずつ、回数を多くする。

自然気胸

外傷などが原因ではなく、肺の異常が原因で胸膜に穴があき、胸腔内に空気がたまった状態を自然気胸という。

症状

肺が圧迫され、胸部の不快感、疼痛、呼吸困難、咳などを伴う。

原因

小児の自然気胸は、肺の表面にできた風船のような小さなふくらみが突然、破れて起こるケースが大部分を占める。

そのほか、胸膜の癒着部が何かの原因で裂け、肺内空気が胸膜腔内に漏出して起きる場合、また、肺結核におかされた胸膜から、空気が胸膜腔内に流人して起こることもある。後者の場合は、自然気胸が小児結核の最初の症状となることもある。
小さなふくらみは一種の奇形で、ひとつの場合は少なく、再発しやすい。

治療

安静を保ち、胸膜の破れを自然に癒着させると、肺も再膨張する。しかし、肺が膨張しないときは、胸腔の空気を吸引する脱気法を行う。脱気法でも膨張せず、また再発を繰り返す場合には手術が必要となる。