胃がもたれる・胸焼けがする

マロリー・ワイス症候群

一度に大量のアルコールを飲んだあとなどに、嘔吐・吐血を伴って起きる病気である。1929年、マロリーとワイスという2人の医学者が発見したことから、このような名がつけられた。

症状と原因

胃と食道の境目にある噴門に、縦長の裂傷ができるのが特徴で、このため多くは飲酒後に激しい胃のむかつきと嘔吐が、吐血を伴ってあらわれる。
しかし、なかには飲酒に関係なく、幽門狭窄食中毒によって起きる嘔吐が原因となる場合もある。
これは、むかつきが起きたとき、胃の幽門が閉じて内容物を上に押し上げ、胃の上部で食道下部の境界である噴門および食道部の粘膜に、損傷を与えるために起こる。

診断

裂傷を確認するために、内視鏡検査を行う。

治療

かつては治癒がむずかしかった病気だが、現在では安静にして薬物療法を行うことにより、完治できるようになった。

食道炎

食道壁の粘膜に炎症が起きる病気で、その炎症が粘膜の下にまで達して潰瘍をつくった場合には食道潰瘍という。ただ、どちらも本質的には同じ病気で、多くの場合、食道潰瘍は食道炎に含まれる。

食道炎には細菌やカビなどによる感染や物理的・化学的刺激が原因で起きる急性食道炎と、アルコール類の飲みすぎなどが原因となる慢性食道炎がある。

また慢性食道炎では、食道裂孔ヘルニアや噴門切除手術などによって、胃液や十二指腸液が逆流して起きる逆流性食道炎が最も多い。

  • 急性食道炎
    魚の骨や入れ歯を誤って飲み込んだとき、また抗生物質やカリウム錠を水なしで飲んだり、寝る前に飲んだりしたときの刺激が原因で起きることがある。
    また抗生物質を服用するさいには、カビの一種であるカンジダ菌が繁殖して起きるカンジダ食道炎を起こすこともある。このほか、酸性やアルカリ性の強い液体を飲んだときにも、食道炎になることがある。
    いずれの場合も、炎症の程度が軽い場合には目立った症状はあらわれないしやくねつが、重い場合には食道にそって灼熱感をおばえたり、胸やけが起きたりする。また、食道に食べ物のの残留をおばえる例もみられる。治療の重点は食道の保護におかれ、炎症が軽い場合には流動食やおかゆなどによる食事療法がとられ、重症の場合には2~3日の絶食が必要。また病状に応じて薬物療法も行われる。
  • 慢性食道炎
    長年にわたってウィスキーやウォッカなどアルコール度の高い酒を飲んでいる人やヘビースモーカーがかかりやすいといわれる。慢性食道炎のなかで最も多い逆流性食道炎は、胃の入り口で胃液などの逆流を防ぐ働きをしている噴門を切除した人や、食道裂孔ヘルニアの人などに多い。慢性食道炎のおもな症状は、胸やけや胸の痛みなどで、ときには囁下障害もみられる。

診断と治療

胃または食道のⅩ線撮影や内視鏡検査が中心で、必要に応じてその他の検査が行われる。また治療には制酸剤や自律神経遮断剤が用いられるが、症状がなかなかおさまらない場合には手術が必要になる。

生活の注意

禁煙を心がけるとともに、寝るときには上体を高くして胃液の逆流を防ぐ工夫も必要。そのほか腹部への圧迫を避け、便秘しないように注意する。肥満している人は、標準体重に近づける努力も大切である。

胃拡張

胃の容積が大きくなった状態を胃拡張という。胃の検査方法が今のように発達していなかったころは、食べすぎで胃がもたれる状態を胃拡張といっていた。

しかし現在では、幽門狭窄のために胃の内容物が十二指腸に移動できず、胃の内容物がたまって胃が拡張するといった、本当の意味での胃拡張はきわめて少ないということがわかっている。

このほか、胃拡張の症例としては、腹部の手術が原因で急に胃拡張が起きることがあるが、これもきわめて珍しい例である。急性胃拡張の症状としては、胃のむかつきと腹痛、全身の虚脱感、腹部全体の張りなどがおもなものである。治療には胃洗浄などが行われ、場合によっては、手術が必要になることもある