腹が慢性的に痛む

胃下垂・胃アト二-

胃下垂は、胃が通常の状態よりも下がった場所にあるというだけで、別に病気ではない。実際、胃の機能も正常を保ち、これといった自覚症状もない。
またやせた人に多くみられ、太ってくれば胃が自然に上に押し上げられて治るので、とくに治療の必要はない。胃下垂の基準は、バリウムを300ml以上飲み、立った状態でX線撮影をしたときに、胃の曲がり角(胃角)が骨盤のなかに入っている場合を胃下垂と呼んでいる。
一方、胃アトニーは、この胃下垂の症状に加えて、胃の筋力低下により胃の働きが鈍くなった状態のことをいう。したがって、こちらもやせた人に多くみられる。

症状

おもな症状は食後の胃もたれで、ゲップが出たり、便秘になったりすることも多い。ただし、はっきりと症状があらわれることは少なく、医師から胃下垂または胃アトニーだと告げられてから症状があらわれるケースもかなりある。

診断

胃のX線撮影で診断できる。また、胃の内視鏡検査が必要になる。そのほか胆のうや膵臓の検査が行われることもある。その場合、膵臓などの組織が胃と比べてやわらかく、Ⅹ線撮影ではわかりにくいので超音波による検査が行われる。

治療

前述のように、胃下垂に対する治療は必要ない。治療が必要なのは胃アトニーだが、こちらも食欲がない、胃の不快感が続くといった場合を除けば、薬などによる治療はとくに必要とせず、食事療法が中心となる。
食事療法で注意すべきことは、胃の負担を軽減し、かつ栄養を十分につけることである。そのためには1日の食事の回数を増やし、1回あたりの食事量を減らすとよい。また食べ物としては、うどんなど消化よいものや、豆腐などの植物性たんばく質を中心にとり、肉や魚は脂肪の少ない赤身肉や白身魚を食べるようにする。なお水分はできるだけ控えたほうがよい。

生活の注意

食後は、食べたものが胃から十二指腸に移動しやすいように、からだの右側を下にして横になる。また十分に睡眠をとるとともに、腹筋運動などで腹筋を鍛えるのも効果的である。
特に「睡眠と食事」に注意すると自然に症状が改善されます。

食道裂孔ヘルニア

胸部と腹部は丈夫な筋肉層ででき横隔膜というドーム状の膜で仕切られている。ただし、この丈夫な横隔膜も、食道が胃とつながっている部分(食道裂孔)に弱点をもち、何かの拍子にここから胃の一部が胸郭内にとび出してくることがある。
この状態が食道裂孔ヘルニアで、食道と胃がつながった部分と一緒に胃の部がとび出してくる滑出型と、食道と胃の接合部分はそのままで胃の一部だけが飛び出してくる傍食道型、そしてその中間型がある。このなかで多いのは滑出型で、この場合、胃の内容物が食道に逆流するため、食道炎を併発することがある。

症状

胸やけ、胸骨下やみぞおちの痛み、吐きけ、吐血、貧血、食べたものがつかえるなどが、回復と悪化を繰り返しながら、数ヶ月から数年続く。
ただし、これらの症状は食道裂孔ヘルニアの症状というよりも、逆流性食道炎やびらん性胃炎、胃潰瘍など合併症の症状と考えられる。また、このほかはんこんきようさく合併症としては、痕痕性食道狭窄症や出血性貧血、胆石症、大腸憩室などがある。なお腹腔にはみ出した部分が小さい場合には、自覚症状も少なく、胃のX線検査で偶然見つかって初めて気づくということもある。

原因

腹腔内の圧力が高まって横隔膜の筋力が衰えるのが原因で、その誘困としては肉体的な老化や脊椎の変形、肥満、便秘、多産などがある。また、心臓病や腎臓病などで腹腔内に水がたまったりした場合にも、腹腔内の圧力が上昇して発病の引き金となる。

診断

食道裂孔ヘルニアそのものはバリウムを飲んで胃Ⅹ線造影をすれば容易に診断できるが、適切な治療を行うためには、同時に胃液逆流や食道炎の有無なども確認する必要がある。そのため食道炎の有無については食道内視鏡検査を行い、胃液の逆流にいては、胃ゾンデを食道や胃に挿入して食道の内圧や酸性度を測定するこもある。なお、この病気は高齢者に多く、症状が似ている狭心症と間違えやすいので注意が必要である。

治療

症状があらわれない場合には、薬による治療は不要で、食道炎の治療に準じて、帯やベルトをゆるく締める、便秘や肥満を防ぐ、寝るときの姿勢や食事の内容に注意するなど、生活上の注意事項を守ることが大切である。
症状がある場合は、制酸剤や自律神経遮断剤を用いるほか、胃液の逆流を抑える薬の服用も、一定の効果を発揮する。また内科的な治療では治らない場合や、炎症のあとがひきつれて食道の内腔が狭まる痕痕性食道狭窄症、はみ出んとんした部分がもとに戻らない嵌頓ヘルニアなどの場合には、手術が必要になる。

寄生虫病

日本でみられるおもな寄生虫病には、次のようなものがある。回虫症寄生虫のなかでは最もよく知られているもののひとつである。
回虫の体長は20~35cmで、乳白色から淡紅色をしている。人体→糞便→野菜類→人体という感染経路をもち、人体に入ると腹痛や下痢などの胃腸症状をもたらすことが多い。
また入り込んだ内臓によっては、眼症状や神経症状、循環器症状があらわれるほか、肺炎や腸閉塞などを引き起こすこともある。

回虫の有無は検便で簡単に判明し、治療には駆虫剤がおもに用いられる。

蟯虫症

虫は乳白色で体長数ミリら数センチの紡錘形をしている。成虫は盲腸とその周辺に寄生し、夜寝ると肛門のまわりに出てきて産卵するという特徴がある。
そして卵は手を介したり空気中のチリとなって、再び口から人体内に入る。おもな症状は腹痛とリンパ節の炎症、肛門周辺のかゆみ、かゆみによる睡眠障害など。
診断にはセロテープを肛門に貼りつけるセロテープ肛囲検査法が用いられ、テープに卵が付着しているかどうかで診断する。治療には駆虫剤が用いられる。しかしそれ以上に集団駆虫や衛生知識の徹底などの予防が重要である。

条虫症

一般にはサナダムシの名で知られている寄生虫で、いくつかの種類に分けられる。なかでも広節裂頭条虫や有絢条虫、無鈎条虫などが知られているが、これらの条虫の体長は数メートルを超える。鮭や牛、豚などに幼虫が寄生し、幼虫のついている肉を生や加熱不十分のまま食べたりしたときに人体に入り、そこで成長する。
症状は腹痛や下痢のほか、飢餓感や多食、体重減少、貧血などで、有鈎条虫の幼虫が脳や筋肉組織に入り込むと、その場所に応じたさまざまな症状があらわれる。診断は検便によって行われ、治療には駆虫剤の服用と貧血の対症療法が行われる。

鉤虫症

絢虫の体長は1cm前後のものが多く、種類によって多少の違いがある。小腸に寄生して血液や体液を養分として摂取する寄生虫で、糞便とともに排泄された卵が野菜類などを通して人体に戻ってくる。
また種類によっては幼虫が皮膚から人体に侵入することがある。
おもな症状は下痢、腹痛、嘔吐などの消化器症状で、ときに鉄欠乏性貧血や毛髪や土などを食べる異味症、めまいなどがあらわれることがある。
検便によって診断し、各種鉤虫駆虫剤の服用や貧血に対する治療が行われる。

吸虫症

肺ジストマ、肝ジストマ、横川吸虫症日本す血吸虫症ななどさまざまな病気を引き起こす寄生虫で、そのほとんどの種類が糞便→水中カワニナなどの貝類→ モズタガニや鯉など淡水業→人間という経路をとる。

ただ日本住血吸虫は水中でミヤイリガイに寄生し、その後、水中に入った人間の皮膚を食い破って体内に侵入する。症状は、肺ジストマではせきと血たんがあらわれ、放置すれば胸膜炎や膿胸などを引き起こす。

また肝ジストマでは茸痘があらわれたり肝内結石ができるほか、そのままにしておけば肝硬変にまで進む。横川吸虫症は下痢や血便、腹痛などがおもな症状。

日本住血吸虫症では感染初期に感染箇所のかゆみがあらわれ、次いで下痢や腹痛などの胃腸症状、発熱、肝肥大、門脈亢進症などがあらわれる。
そして、さらに肝硬変まで進み、死亡するケースも少なくない。診断は検便のほか、必要に応じて皮内反応検査を行う。治療は駆虫剤の服用と対症療法を行う。

包虫症

成虫が寄生するキツネやオオカミ、犬などの糞便に卵が排泄され、それが人体に入って成長する。キタキツネなどを媒介として、北海道東部に発生することが多い。症状は寄生する場所によって異なるが、肝臓や肺、脳、まぶた腫瘤とそれに伴う諸症状があらわれるケースが多い。

アニサキス症

もともとはクジラなどす海に棲む晴乳類の胃壁に寄生する回虫の一種である。人体へは中間宿主であるイカ、サバ、アジなどを介して感染し、胃腸に寄生する。症状としては上腹部を中心とした激痛かよく知られるほか、下襟や、急性腹痛、胃腫瘍の症状があらわれる。胃の内視鏡検査で見つかることが多く、そのときに駆除する。

フィラリア症

(蚊などが人間の血を吸うさいに、血液中の幼虫が一緒に吸い出され、それが蚊によって再び人体に侵入する。成虫による反応性炎症と、足の皮膚の肥厚など象皮病に似た症状が、おもな症状である。その症状によってある程度、診断の見当はつくが、夜間の血液中にいる幼虫の存在が決め手となる。