腹が張る

腸結核

症状

結核菌が腸に感染して起きる病気で、おもな症状は、便秘や下痢といった便通異常、腹痛、発熱である。便通異常は約45% が下痢、約38%が便秘で、そのほか両方がかわるがわるあらわれることがある。
腹痛は右下腹部とへその周囲にあらわれることが多い。また腸内にガスがたまって腹がゴロゴロ鳴る(腹鳴)ことも多く、腸に狭窄が起きれば、激しい痛みとともに、腹嶋が強くなる。発熱は病気が進行するにつれてあらわれるようになり、食欲不振や貧血がそれに伴う。

原因

腸結核のほとんどは、肺結核患者に起こる。回腸の末端部や盲腸周辺に起きることが多く、腸管内部の粘膜にいくつもの潰瘍ができて穿孔を起こすこともある。また腸の近くにあるリンパ節に広がって腸間膜リンパ節結核を起こしたり、結核性腹膜を起こしたりすることも少なくない。

診断

肺結核に続いて起きることが多いので、ある程度の診断はできるが、確かな診断を下すために、まず腸のⅩ線撮影で大腸や回腸下部をくわしく調べ、次いで大腸ファイバースコープなどを肛門から挿入して内視鏡検査を行う。そのほか赤沈検査や糞便検査、その他の生化学検査、一般血液検査などが行われることもある。

治療

肺結核が原因の場合は、まずそれを治すことが先決であり、そのために結核菌に有効な抗生物質の服用などが行われる。それとともに食事療法を行い、消化がよく、カロリーの高いものを食べるようにする。いくつか例をあげれば、白身魚、缶詰の魚、やわらかい赤身の牛肉、鶏のささ身、繊維質の少ない野菜の煮物などである。また衰弱が激しく、栄養補給が必要になる。

急性腹膜炎

腹膜に起こる急性の炎症で、さまざまな原因により起こる。

症状

我慢できないほどの激しい腹痛があり、吐きけや嘔吐、ときに腹部の膨満感を伴う。痛みは一様ではなく、しだいに強くなる。とくに腹部に手を当てて軽く押し、離すと反射的に強く痛む。ひどい場合には全身にショック症状があらわれ、血圧が下がって手足が冷たくなることもある。
さらに進行すると表情が苦痛にゆがみ、腹部が板のようにかたくなる。ただし頻繁な嘔吐がある場合は、時間がたつにつれて脱水状態に陥り、腸管がまひして初期の激痛がいくぶん弱まることもある。

原因

多くは細菌感染によるものである。なかでも、虫垂炎によって盲腸が破れ、穿孔(穴)ができて発症することが多い。
そのほかにも胃・十二指腸潰瘍、腸閉塞などによる穿孔や、腹部外傷によって胃や腸に穴があいたときにも起こる。また、子宮や卵巣の炎かのう症、胆のう灸などの化膿したところから起こることもある。

検査と治療

手遅れになると、生命の危険を伴うので、一刻も早く医師の診察を受ける。採血や腹部触診、X線撮影などで診断し、直ちに開腹手術や腹腔鏡下手術が行われる。

慢性腹膜炎

慢性腹膜炎には結核性腹膜炎、癒着性腹膜炎(腹腔内癒着)などがある。

結核性腹膜炎

症状と原因

結核菌の感染によって起こる腹膜炎だが、はじめから腹膜に起こることはまれである。ふつうは肺結核、結核性胸膜炎、腸結核などの結核症が原因となっている。
結核菌は菌が血管やリンパ管を通って移動するため、腹膜に達すると考えられている。肺結核や腸結核などの合併症であれば、それらの症状が全面に出るが、一般に発病・経過ともゆるやかで、腹痛、微熱、寝汗などの症状のほかに、おなかが張るなどの不定症状がある。病型的にみると、著しく腹水がたまっている滲出型、すぐに癒着してあまり動かないしこりがでできて腸狭窄や鼓腸のため腹部にふくらみがみられる乾性型、癒着の中心部にチーズに似た黄白色の膿汁が認められる乾酪型に分けられる。

検査と診断

これといった特有の症状がないため、診断は容易ではなく、結核の既往歴や前記の症状を参考に、腹腔鏡検査、腹水検査などが行なわれる。腹部のⅩ線写真やツベルクリン反応の結果なども診断の手がかりになる。

治療

原則的に抗結核剤を中心とした内科的治療を行うが、安静にしてバランスよく栄養をとることも重要。予後は病気の型によって異なってくる。
滲出型は抗結核剤によく反応し、予後も良好で、乾性型は腸狭窄症状などがあらわれれば、開腹手術によってくっついたところをはがしたり、腸をつなぎ合わせたりするが、ふつうは慢性の経過をとる。乾酪型は内科的治療が原則だが、急性の腹膜炎を併発した場合などは、手術することもある。

癒着性腹膜炎

開腹手術のあとや腹膜の損傷、出血、腹腔内炎症などにより、血漿のなかの線維素という成分が出て、腸管などが癒着したのが癒着性腹膜炎である。癒着は炎症が広がることを防止するなどの腹膜の重要な機能のひとつだが、この働きがよくない場合、腸狭窄や癒着性腸閉塞などの病気の誘因となる可能性もある。
癒着だけでは無症状の場合が多いが、腸管に通過障害が起こると、腹痛、便通の異常、吐きけ、嘔吐などの消化器異常に加え、おなかが張った感じがする。また、腹部がかたく、しこりが感じられる場合もある。癒着の程度、範囲、合併症などにより、症状がいろいろ変わることが多い。腸閉塞や腸狭窄であれば開腹手術が必要だが、原則として内科的治療を行う。