肺気腫

肺のなかでガス交換を行っている肺胞が破れて、肺全体が膨張する病気である。発病するのは男性に多く、女性のおよそ10倍といわれる。比較的高齢者に多い病気でもある。

症状

まず最初に息切れかあらわれ、坂道や階段を上るさいに息づかいが荒くなり、苦しくなる。ぜんそくや気管支炎を合併することが多く、その場合には激しい喘鳴やせき、たんがあらわれる。
さらに病気が進むと呼吸困難をおぼえるようになり、しだいにそれがひどくなって、思うようにからだが動かせなくなる。また、このころになると胸郭の膨張や唇のチアノーゼ、爪のバチ状化などがあらわれる。
そして、さらに悪化すると肺動脈に高血圧があらわれて右心が膨張する肺性心の状態になる。肺性心になると全身のむくみや食欲不振、頻脈、強い呼吸困難が起きて、ついには動脈を流れる血液に酸素が不足する一方で、二酸化炭素が蓄積される。その結果、頭痛や不眠、意識の混濁などがあらわれる肺性脳症となる。

原因

肺気腫の原因はよくわかっていないが、肺胞の組織がなんらかの理由で壊れやすくなることが基本的な原因とされている。これをうながす誘因としては、老化に伴う萎縮、細菌の感染、肺動脈や気管支動脈の硬化による栄養障害などがあげられるが、とくに窒素酸化物やオゾンなど有害刺激物質の吸入や喫煙習慣が大きな原因となっているといわれる。

診断

診断には胸部X線撮影のほか、呼吸曲線(スパイログラム) や動脈血のガス分析など肺機能検査が行われる。肺気性はX線撮影では陰影が映らないため、肺機能検査のデータは診断だけでなく、病気の程度を知るうえでもきわめて重要な情報となる。

治療

一度破壊された肺胞は、治療によって回複させることはできない。したがって肺気腫の治療は、病気の進行を阻むことが中心となる。そのために最も重要なことは、喫煙者はまずたばこを吸わないことである。
また気管支炎など合併症がある場合には、その病気の治療を進めると同時に、肺気腫の急性化と悪化をまねくかぜの予防にもつとめなければならない。とくに、ひどい息切れ、せきやたんの増加、発汗、頭痛、頻脈、不眠、乏尿などの症状があらわれた場合には、すぐに専門医の治療を受ける必要がある。

肺気腫の薬としては、抗生物質や去たん剤、気管支拡張剤、抗コリン剤などが必要に応じて用いられる。そのほかたんの出やすい姿勢をとってたんを出す体位を整えたり、息切れを軽減するための呼吸リハビリテーションを行うことも必要となる。なお食事の注意としては、栄養と水分を十分に補給し、たんばく質に富んだ食事で体重の維持を心がけるようにしたい。

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