慢性腹膜炎

慢性腹膜炎には結核性腹膜炎、癒着性腹膜炎(腹腔内癒着)などがある。

結核性腹膜炎

症状と原因

結核菌の感染によって起こる腹膜炎だが、はじめから腹膜に起こることはまれである。ふつうは肺結核、結核性胸膜炎、腸結核などの結核症が原因となっている。
結核菌は菌が血管やリンパ管を通って移動するため、腹膜に達すると考えられている。肺結核や腸結核などの合併症であれば、それらの症状が全面に出るが、一般に発病・経過ともゆるやかで、腹痛、微熱、寝汗などの症状のほかに、おなかが張るなどの不定症状がある。病型的にみると、著しく腹水がたまっている滲出型、すぐに癒着してあまり動かないしこりがでできて腸狭窄や鼓腸のため腹部にふくらみがみられる乾性型、癒着の中心部にチーズに似た黄白色の膿汁が認められる乾酪型に分けられる。

検査と診断

これといった特有の症状がないため、診断は容易ではなく、結核の既往歴や前記の症状を参考に、腹腔鏡検査、腹水検査などが行なわれる。腹部のⅩ線写真やツベルクリン反応の結果なども診断の手がかりになる。

治療

原則的に抗結核剤を中心とした内科的治療を行うが、安静にしてバランスよく栄養をとることも重要。予後は病気の型によって異なってくる。
滲出型は抗結核剤によく反応し、予後も良好で、乾性型は腸狭窄症状などがあらわれれば、開腹手術によってくっついたところをはがしたり、腸をつなぎ合わせたりするが、ふつうは慢性の経過をとる。乾酪型は内科的治療が原則だが、急性の腹膜炎を併発した場合などは、手術することもある。

癒着性腹膜炎

開腹手術のあとや腹膜の損傷、出血、腹腔内炎症などにより、血漿のなかの線維素という成分が出て、腸管などが癒着したのが癒着性腹膜炎である。癒着は炎症が広がることを防止するなどの腹膜の重要な機能のひとつだが、この働きがよくない場合、腸狭窄や癒着性腸閉塞などの病気の誘因となる可能性もある。
癒着だけでは無症状の場合が多いが、腸管に通過障害が起こると、腹痛、便通の異常、吐きけ、嘔吐などの消化器異常に加え、おなかが張った感じがする。また、腹部がかたく、しこりが感じられる場合もある。癒着の程度、範囲、合併症などにより、症状がいろいろ変わることが多い。腸閉塞や腸狭窄であれば開腹手術が必要だが、原則として内科的治療を行う。

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