腎孟腎炎

腎孟、腎杯に炎症が起きる病気を腎孟腎炎というが、腎孟腎炎はその炎症が腎実質にまで広がった状態をいう。女性に多く、なかでも新婚や妊娠のさいにかかりやすい。
急性のものと慢性のものがある。

症状

まず午前中はやや低く、午後から夕方にかけては39度かそれ以上の発熱が、寒けを伴ってあらわれる。また必ず尿の濁りがみられるほか、背中から腰にかけての痛みや吐きけ、嘔と吐などがあらわれる。

ただし、ときには微熱程度の発熱で、排尿時に痛みを感じたり、尿の回数が増えたりすることもある。慢性腎孟腎炎も病気の活動期には発熱や寒け、腰から背中への痛みなど、急性と同じような症状があらわれる。

しかし急性腎孟腎炎では高熱が出るのに対し、慢性の腎孟腎炎の発熱は微熱程度である。また非活動期には微熱のほか、全身倦怠感や食欲不振、腰痛などさまざまな症状があらわれるが、ときには何も症状がないケースもある。

そして腎臓の機能が低下するにつれ食欲不振や嘔吐などが強まり、血圧が上昇したり、血液中の窒素が増加したりする。慢性腎孟腎炎のなかには10~20年にわたって炎症が続いて腎機能が低下するケースがあり、とくに尿路結石や前立腺肥大症、尿道狭窄など尿路閉そく塞がある場合には、治りにくいといわれる。

原因

大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌などが腎臓に感染して起きる。その場合、おもに尿道→膀胱→尿路→腎臓というように尿の流れと反対の経路をたどる上行感染だが、なかには血液の流れにのって細菌が腎臓に侵入する場合がある。

急性腎孟腎炎は急性膀胱炎に続いて、またはほぼ同時に発病することが多い。また慢性腎孟腎炎には、急性のものが慢性化する場合と、急性腎孟腎炎がいったんは完全に治りながら再発を繰り返す場合、はじめから急性期がないまま慢性の経過をたどる場合がある。

診断

尿のなかの白血球や細菌を調べるために尿検査を行う。また静脈性腎孟造影を行うこともあり、その場合、急性腎孟腎炎では変化がみられないが、慢性腎孟腎炎では腎杯の変形がみられる。

治療

急性の場合は、安静を保つことが第一である。そして原因となった細菌に有効な抗生物質を、完全に治るまで服用する。またアルコールや刺激の強い食べ物を避けると同時に、水分を十分にとって排尿をうながすことも大切である。

また、急性腎孟腎炎は尿路閉塞を伴わず一週間以内に治る場合がほとんどである。しかし、なかには原発性勝胱尿管逆流や前立腺がん、前立腺肥大症、膀胱腫瘍などによる尿路閉塞が原因となって起きるケースもある。

その場合には薬による治療だけで完全に治すのはむずかしく、回復が長びくばかりか、治療を中止したりすると再発しやすい。したがって、まず原因となる尿路閉塞を治療することが重要である。

なお原発性膀胱尿管逆流による急性腎孟腎炎は乳幼児に多くみられ、前立腺がんや前立腺肥大症などによるものは高齢者に多い。慢性の場合には、長期間にわたる抗生物質やサルファ剤が用いられる。また尿道結石など尿の通過障害があれば、それに対する治療も並行して行われる。慢性腎孟腎炎も薬による治療だけでは治すことがむずかしく、尿路閉塞に対する手術や腎不全に対する人工透析などが行われることもある。

生活上での注意

慢性の腎孟腎炎は長期間の治療が必要なので、医師による治療と同時に、日常生活における節制も大切になる。とくに寒さや過労は病気を再発させるきっかけとなりやすいので注意が必要である。食生活は、からだに抵抗力をつけるため、高エネルギー食が基本になる。また自覚症状が消えてからも、月に1~2回は定期的に尿検査を行い、病状を常に確認することが望ましい。

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