精神的なストレスを解消するためにひっきりなしに食べるのが過食症であり、男性よりも、女性に多くみられる。肥満でで紹介した神経症による過食もそのひとつだが、強いやせ願望が原因となる神経性食欲不振症の反発が異常な大食となってあらわれるケースもある。
後者の場合、本人はいつ自分が大食を始めるか不安になり、食事をしても口に指を入れて食べ物を吐き出したり、下剤を服用したりするので、いくら食べても太らない。
過食症は、精神的・心理的な原因、内分泌的な原因など多種多様なので、内科医、心療内科医、精神科医とよく連絡をとり合って治療を受ける必要がある。
太りすぎる
肥満症
脂肪組織にたくさんの中性脂肪がたまって体重が増加した状態を肥満症という。医学的には標準体重をもとにして肥満の有無を判断することになっている。
なお肥満症には単純性肥満と症候性肥満の2つがある。単純性肥満は特別な病気がなくて太っている状態であり、症候性肥満は内分泌系の病気や遺伝、脳の異常が偵閃で太るものである。
肥満している人のほとんどが単純性肥満であり、症候性肥満は全体の5%程度。ここではおもに、単純性肥満について述べる。
原因
日常生活で消費するカロリー以上の栄養をとり、その結果、余った栄養が中性脂肪に変えられて脂肪組織に蓄積されることが原因となる。遺伝的に太りやすい体質の人もいるが、単純性肥満のほとんどは食べすぎと運動不足が原因である。
とくに成人男性には、食べすぎと同時にアルコールによるカロリーのとりすぎが目立つ。また食べることによって寂しさや欲求不満、退屈など精神的ストレスを解消しようとするのが強迫的過食で、女性にはこれが原因で肥満する人が多いといわれる。妊娠のたびに食べすぎて太る母性肥満も女性特有の現象である。
肥満による病気
肥満は体内に必要以上の脂肪が苔横されている状態であり、肥満が原因でさまざまな病気を誘発する例が多い。たとえば肥満しているために動作が鈍くなる、
とくに膝関節や股関節が体重を保持することがむずかしくなる。体重が重いため心臓がふつうの人よりも余計に働くので、心臓肥大や不整脈が起きやすくなる。
とくに糖尿病や動脈硬化、高血圧症といった生活習慣病は肥満と強い因果関係をもっているので注意が必要だ。遺伝的に糖尿病の素因をもっている人の場合、ふだんでも膵臓からのインスリンの分泌が不足がちであるのに、肥満するとインスリンの需要がいっそう増加してしまう。
そして、この需要に応えられなくなると糖尿病が出る。また体内に余分な脂肪が蓄積されれば、当然血液中の中性脂肪が増加して動脈硬化の原因となり、このことが心筋梗塞や脳血栓などの病気を引き起こす。一方で肥満は血圧の上昇もまねいて心臓の負担を増やし、心筋障害の傾国となることがある。このほか、痛風や脂肪肝、胆石症、がん、女性の場合は不妊症の率も高くなる。また、肥満の程度が高いほど平均的寿命が短くなる。
診断
それまでの病歴や、家族歴、生活歴、身体検査の結果などから、単純性肥満か症候性肥満かを判断する。その結果、単純性肥満であれば糖尿病や心臓障害、肝臓障害などの合併症の有無を調べる。また症候性肥満の疑いがある場合には、入院による精密検査を行い、肥満の原因となる症状別に応じた治蝶をする。
治療
薬剤使用は副作用もあるので、治療には減食と、それに応じた適度な運動が自然で、最も効果的。減食ただ単に食事の量を減らせばいいというわけではない。
食品に含まれる栄養素のうち、エネルギー源となる糖質や脂質を減らし、からだをつくるたんばく質や生理作用に欠かせないビタミンやミネラルは十分にとるようにする。そのためにも主食は少なめに、おかずの種類を多くして、野菜はとくに多くとるような心がけをしておきたい。朝、昼、夕3回きちんとバランスよくとり、味つけは薄め、アルコールは控え、ゆっくりと、よくかんで食べることが大切。
なお減食による減量は、1週間に1kgくらいのペースが適当。断食は危険を伴うのでやめたい。運動運動によるエネルギー消雪はわずかで、運動だけでやせることはむずかしい。しかし、食事療法だけで減量すると、脂肪だけではなく、筋肉まで減ってやつれてしまう。
特別な運動ではなく、なるべく歩く、階段を使うなど、日常生活のなかで生活習慣として、からだを動かすことを取り入れていきたい。