歯が痛い・しみる

咬耗症

歯のかみ合わせによって、歯の表面をおおっているエナメル質や内部の象牙質の一部がすり減ってしまう病気を咬耗症という。

症状と原因

上下のあごのかみ合わせの対合歯や隣接歯との摩擦で起こり、前歯では先端部分、臼歯ではかみ合わさった突起部分からすり減っていく。すり減る程度は、食べ物のかたさや、かむ力、歯のかみ合わせの状態、歯のかたちなどで人によりそれぞれ違ってくるが、年齢的に早い人で30歳代からすでに症状がみられる。
多くの場合は40歳すぎからだが、歯ぎしりの強い人によくみられる症状である。この症状はゆっくりと進行していくため、自覚症状がない場合が多いが、症状がひどくなると冷たいものや熱いものに対して敏感になってくる。むし歯と同様にが必要になってくる場合もある。

歯髄炎

むし歯が原因となって起こる病気のひとつで、血管や神経に富む歯髄組織が炎症を起こし、激しく痛む。

症状と原因

むし歯が悪化し、歯髄との間の象牙質が薄くなると、冷たいものや熱いものなどの刺激が伝わりやすくなる。また、象牙質にある細い管を通じて細菌などが歯髄内に侵入するため、炎症が起こる。歯髄炎とむし歯の進行状態は深く関係しているため、むし歯の痛み具合で歯髄炎の状況が判断できる。歯髄炎にはむし歯との関連で次のような段階がある。
歯髄充血歯髄炎の初期段階で外見上のむし歯は第一度か第二度の状態。刺激物による痛みがあるが、一過性で何もしなければ痛みはない。
むし歯の治療により症状は改善される。単純性歯髄炎むし歯が歯髄まで達していないが、外見上のむし歯で、刺激による痛みは歯髄充血よりもやや長く、とくに刺激を与えないのに自然に痛みをおぼえることがある。化膿性歯髄潜むし歯が歯髄まで達し、細菌に感染して化膿した状態。激しい痛みがズキンズキンと脈を打つようになる。

痛みが顔全体に広がり、物がかめなくなる。歯髄からうみが出ないかぎり、症状は歯髄が死滅するまで続く。うみが出れば痛みはなくなるが、そのまま放置しておいて、さらに症状が悪化すると、露出した歯髄に潰瘍ができたり(潰瘍状に増殖する増殖性歯髄炎などの状態になる。

予防

早期にむし歯を発見することが重要。歯髄はできるだけ抜かないほうがよいので、歯髄炎を起こす前にむし歯を治療しなければならない。

むし歯

むし歯は人類にとって最も古くからあった病気のひとつで、正式には「う歯」という。だれでもかかりやすく、むし歯にかかっている人は各年代を通して7割以上いるといわれている。むし歯は初期に発見・治療すれば、治りやすく、治療費も軽減できる。

症状と原因

むし歯は特殊な病原菌によって引き起こされる病気で、決して自然に治ることはない。そのまま放置しておくと、だんだん痛みが増して、歯髄炎や歯根膜炎へと悪化し、歯が崩壊したり、さらには重症の顎骨炎へと進行する。
症状を悪化させないうちの早期治療がなによりも大切だ。むし歯を起こす何種類かの病原菌のうち、いちばんくわしく研究されているのがミュータンス連鎖球菌というむし歯菌である。このむし歯菌は歯を栄養物として歯のなかで増殖し、かたい歯をくずしていく。口のなかに入ってきた糖分をデキストランという粘着性のある物質に変化きせて、歯の表面に接着させ、むし歯を発生させやすくしている。そのほか、むし歯発生の誘因として

  1. 歯みがきやうがいなどによる清掃不足
  2. 粘りのある唾液
  3. 糖分の多い菓子類や酸性果汁のとりすぎ

などがあげられる。また、歯質自体がもろかったり、歯のかたちが悪かったりしてもむし歯の誘因になる。とくに歯が形成される時期にビタミンDや石灰分などの栄養分が不足すると、むし歯になりやすくなる。むし歯は、その進行の度合いによって、最も症状の軽いC1から症状の重いC4まで4四段階に区分されている。

予防

むし歯菌は歯の表面をおおっている歯垢のなかに集まっているため、歯垢がつかないように、食後にきちんと歯みがきをする必要がある。また、食べ物のなかでも、野菜や果物のように繊維を多く含んで歯の清掃に直接役立つものや、歯の表面にある酸を中和するアルカリ性の飲料などは、むし歯の発生を抑制する働きがある。むし歯のできやすい妊娠中の女性や10歳くらいまでの子どもの場合は、牛乳を飲む、野菜や海草をとるなど栄養に十分配慮する必要がある。