顔がゆがむ・表情がかわる

重症筋無力症

脳から末梢神経に伝わった命令は、アセチルコリンという物質を通して筋肉の収縮運動を起こしているが、このアセチルコリンの伝達が不十分になったために筋肉が疲れやすくなったり、筋肉に力が入らなくなったりするのがこの重症筋無力症である。

症状

はじめは運動や力仕事をしようにもうまく力が入らなかったり、筋肉に力が入ってもすぐに疲れ、休めばまた力が入るようになるのが特徴で、まぶたが下がってきたり、声が出なくなったり、物が二重に見えるなどの症状があらわれる。
さらに進むと、食事のときに食べ物をかんでもすぐに疲れたり、飲み込みがうまくいかなかったりしてくる。とくに、まぶたが下がったり筋肉に力が入らなくなる症状は、午前中は良好であっても、午後には悪くなるといった状態が続くようになる。
悪化してくると、顔面筋や舌筋などがまひし、手足の筋肉にも力が入らないようになる。ときには呼吸筋まで影響があらわれることもあるので、注意が必要。

原因

原因ははっきりわかっていない。しかし重症筋無力症の患者のうち、10% が胸腺の腫瘍をもつ人であることがわかっており、かなりの患者が胸腺肥大であるところから、胸腺にかかわる自己免疫疾患説が有力視されている。

治療

胸腺腫瘍が発見された場合はまずその腫瘍を取り除く手術が行われる。一般的には薬物療法として、免疫抑制剤と抗コリンエステラーゼ剤を用いることで、症状を緩和させる。重症の場合は血漿交換療法がとられることもある。

生活の注意

予防注射によって症状が悪化することもあるので、予防注射は避けたほうがよい。また、かぜをひくと症状が誘引されるので、かぜをひいたときはすぐに医師の診察を受けて、場合によっては入院するほうが安心である。

顔面神経まひ

顔面神経に障害を受けたために、障害を受けた側の顔の筋肉もまひして、表情がなくなる病気。

症状と原因

顔の片側だけに症状が起きるのがふつうだが、まれに両側に起きることもある。まひしてくると、筋肉がゆるむために顔がゆがみ、シワが寄らない仮面のような顔つきになったり、まぶたが完全に閉じられず、また、まひした口の片側が開いたままでよだれをたらしたり、食べ物が出てしまったりする。
悪化すると、激しいめまいや耳鳴り、歩行障害や味覚の喪失をきたしたりすることもある。原因は今のところ不明だが、ウィルスなどの感染によって起こるとも考えられている。そのほか、神経炎または脳腫瘍など、頭蓋骨内の内外の神経の炎症または腫瘍が原因で起こることがある。

治療

突然症状が起こった場合はすぐに医師の診察を受けるが、治療としては副腎皮質ホルモン剤やビタミンB複合剤などを服用し、マッサージや電気治療も有効とされている。

強皮症

膠原病の一種で、その名のとおり皮膚がかたくこわばってくるのが特徴の病気である。中年以降の、とくに女性に多い。

症状

症状は進行性のもので、はじめは手の指や顔がむくんだような感じで、動かすとつっぱるような感じがする。それから数ヶ月か数年すると、皮膚がこわばってかたくなってくる。
そしてしだいに顔や胸、足など、全身の皮膚の硬化が顕著になる。手の指がかたくなると、指先が曲がったままで物が握れない状態になる。
ときには指先に潰瘍ができたり、爪の変形をみることもある。また、レイノー現象といって、ふだんの皮膚の色は正常でも、冷たい水に手を入れると真っ白に変わる症状も、この病気に多くみられるものである。
皮膚がかたくなる前にレイノー現象があらわれることもあるので、診断の一助になる。顔の皮膚が硬化しはじめると、シワが少なくなるために表情も乏しくなる。
一方、胸の皮膚がかたくなった場合は、ときには呼吸困雛を訴えることもあるので注意が必要である。このほか、胃や腸、食道、肺、腎臓などの内臓にも硬化の現象があらわれることもあり、その場合は内臓の機能障害となるので、早急な処置が必要となる。

原因

原因は不明であるが、いわゆる結合織病、膠原病といわれる自己免疫疾患の一種である。

治療

医師の指示のもと、副腎皮質ホルモン剤やD・ペニシラミン、血管拡張剤などを用いるが、現状の薬は、病状の進行を食い止めるまでには至っていない。

生活の注意

皮膚がかたくなるのを防ぐために、温浴や保温でからだの冷えを防ぐことに留意した生活を心がける。また、手足のマッサージや過度な運動も皮膚の硬化を防ぐためには有効である。とくに一度傷をつけると治りにくいので、肌をあまり出さないようにし、保温の意味から冬季は手袋を常用したほうがよい。