息切れがする

薬物アレルギー

薬の副作用によって、さまざまな症状が出ることをいう。一時的な発疹やかゆみで治まるケースもあるが、牛命にかかわることもある。注射や服用によって体内に吸収された薬がアレルゲン(抗原)となって、抗原抗体反応を起こすために生じる。
アナフィラキシーショックは、薬物アレルギーのなかでも最も重い症状で、その代表としてペニシリンによって起きるものが知られている。
ペニシリンを注射して五分以内に呼吸困難になり、お、つと意識を失う。そのさい、吐きけや嘔吐、失禁、じんま疹を伴うこともあり、やがて血圧が急速に下がって、放置すれば危険な状態となる。ショックの原因となるのはペニシリンばかりではなく、ほかの抗生物質でも起こすことがある。そのため、医師はアレルギーを起こす恐れのある薬を用いるときには、前もってアレルギーの有無を判断することになっている。以前にアレルギー症状の経験がある人は、そのときのことをくわしく医師に報告するようにしたい。

その他の薬物アレルギー

薬物によるアレルギー症状としては発疹が最も一般的だが、そのほかにも白血球や血小板などの減少や貧血といった血液障害や、ぜんそくなどの呼吸器症状、肝臓や腎臓、胃腸の障害、筋肉・関節痛、視力・聴力障害などさまざまな症状があらわれる。
これらのアレルギー症状を避けるためには、医師からの薬に関する指示を必ず守ること、市販薬は説明書をよく

肺気腫

肺のなかでガス交換を行っている肺胞が破れて、肺全体が膨張する病気である。発病するのは男性に多く、女性のおよそ10倍といわれる。比較的高齢者に多い病気でもある。

症状

まず最初に息切れかあらわれ、坂道や階段を上るさいに息づかいが荒くなり、苦しくなる。ぜんそくや気管支炎を合併することが多く、その場合には激しい喘鳴やせき、たんがあらわれる。
さらに病気が進むと呼吸困難をおぼえるようになり、しだいにそれがひどくなって、思うようにからだが動かせなくなる。また、このころになると胸郭の膨張や唇のチアノーゼ、爪のバチ状化などがあらわれる。
そして、さらに悪化すると肺動脈に高血圧があらわれて右心が膨張する肺性心の状態になる。肺性心になると全身のむくみや食欲不振、頻脈、強い呼吸困難が起きて、ついには動脈を流れる血液に酸素が不足する一方で、二酸化炭素が蓄積される。その結果、頭痛や不眠、意識の混濁などがあらわれる肺性脳症となる。

原因

肺気腫の原因はよくわかっていないが、肺胞の組織がなんらかの理由で壊れやすくなることが基本的な原因とされている。これをうながす誘因としては、老化に伴う萎縮、細菌の感染、肺動脈や気管支動脈の硬化による栄養障害などがあげられるが、とくに窒素酸化物やオゾンなど有害刺激物質の吸入や喫煙習慣が大きな原因となっているといわれる。

診断

診断には胸部X線撮影のほか、呼吸曲線(スパイログラム) や動脈血のガス分析など肺機能検査が行われる。肺気性はX線撮影では陰影が映らないため、肺機能検査のデータは診断だけでなく、病気の程度を知るうえでもきわめて重要な情報となる。

治療

一度破壊された肺胞は、治療によって回複させることはできない。したがって肺気腫の治療は、病気の進行を阻むことが中心となる。そのために最も重要なことは、喫煙者はまずたばこを吸わないことである。
また気管支炎など合併症がある場合には、その病気の治療を進めると同時に、肺気腫の急性化と悪化をまねくかぜの予防にもつとめなければならない。とくに、ひどい息切れ、せきやたんの増加、発汗、頭痛、頻脈、不眠、乏尿などの症状があらわれた場合には、すぐに専門医の治療を受ける必要がある。

肺気腫の薬としては、抗生物質や去たん剤、気管支拡張剤、抗コリン剤などが必要に応じて用いられる。そのほかたんの出やすい姿勢をとってたんを出す体位を整えたり、息切れを軽減するための呼吸リハビリテーションを行うことも必要となる。なお食事の注意としては、栄養と水分を十分に補給し、たんばく質に富んだ食事で体重の維持を心がけるようにしたい。

心不全

心不全とは、心臓の働きが低下し、からだが必要とする血液量を体内の隅ずみに十分に供給できなくなるために生じる一連の症状をいう。
心不全は病名ではなく心臓の機能が衰弱した状態を指すもので弁膜症によって心不全になることもあれば、心筋梗塞のために心不全となることもある。

症状

急性か慢性かによって経過は多少異なるが、最終的にはどちらも心臓の機能が衰えて十分に働かなくなる。心臓は左房、左室、右房、右室の四つの部屋からなるが、心不全を起こすのは、このうちの左室か右室の障害でそれによって左心不全と右心不全とに分けられる。
いずれの場合も心筋梗塞などのあとでは急性となり、長期間の高血圧の場合には慢性となる。左心不全の場合には、睡眠中の呼吸困難やからぜきがあらわれる。

また肺水腫は急性左心不全が誘因となることが多く、せきがひどく、たんに血が混じるようであれば、急性肺水腫の疑いがある。たとえ肺水腫でないにしても、急激な呼吸困難や血たんは病状の悪化を告げる赤信号なので、すぐに医師の治療を受けなければならない。
一方、右心不全は、からだにむくみがあらわれるのが特徴である。とくにからだの重みがかかる部分にむくみが出やすいので、足首や腰、大腿部にむくみがあらわれたら要注意である。また夜間の尿量が急に増えはじめたときにも、右心不全の疑いがある。

治療

心不全になったら、まず絶対安静を守らなければならない。そのさい、クッションなどに寄りかかって上体をいくぶん高くしておくと呼吸が楽になる。また自宅療養では、

  1. 心身のストレスを避けて、心臓の負担を少しでも軽減する
  2. 薬の服用については、医師の指示を厳守する

などが大切である。とくに心不全の治療には比較的強力な薬が用いられるので、服用する量や時間を守ることは絶対条件である。また食塩の制限では、食塩に含まれるナトリウムも制限の対象となる。ナトリウムは水道水にも含まれているので、その点にも注意が必要である。

病気の進行具合によっては、水分の摂取を控えなければならないこともある。なお食事については、バランスよく栄養を補給することが大切である。心不全になると食欲不振になりがちなので、一度の量は少なくても、栄養価の高いメニューや、食事の回数を増やすなどの工夫をしたい。とくにビタミン類は十分にとるように心がけたい。もちろん酒やたばこ、そしてコーヒーなどカフェインを多く含む飲み物は厳禁。

生活の注意

心不全の治療には心身の安静が何よりも大切だが、いつまでもからだを動かさないと、食欲不振や便秘、筋力低下など、さまざまな弊害があらわれる。したがって、ある程度病気が回復したら、手足を動かしたり、何度も深呼吸するなどの軽い運動を始める。ただし素人判断による運動は危険なので、必ず循環器系の専門の医師の判断をあおがなければならない。