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鼠径ヘルニア

小腸の一部が太もものつけ根にとび出してくる病気。いわゆる脱腸で、片側だけの場合と左右両方の場合がある。比較的男子に多く、ときに陰のうの下まで下がってくる。手で押すと、グルグルと音がして、腸がおなかのなかへ戻る場合にはほとんど痛みはない。

30% は1歳ごろまでに自然に治っしまうが、嵌頓するのもこの時期に多いので小児科で診察をうける。嵌頓とは、押しても腹腔内に戻らずに腸閉塞を起こす非常に危険な状態である。

症状

乳児が急に泣きだしたり、お乳を吐いたり、顔色が悪くなったら、この病気の恐れがあるので、太もものつけ根や陰のうがはれてないかを調べる。ヘルニアの嵌頓を起こしていると、はれはかたく、さわるととても痛がる。当初は嵌頓の部分だけが痛むが、しだいに腹部全体が痛くなり、顔色は青ざめ、お乳を吐き、腹部がだんだん張ってくる。

原因

泣いたり排便のときなどに強い腹庄がかかって発症する場合と、消化障害、腸内発酵などにより糞便やガスが入り込んで発症する場合とがある。

治療

嵌頓を起こしたら、早急に小児外科でおなかのなかに腸を戻す手当てを受ける。2二時間以内なら、麻酔下の処置で90% はもとに戻る。ただし、再発の恐れがあるので、いたずらに長期間、経過をみるのではなく、手術の時期を医師と相談する。もちろん戻らない場合には、すぐに手術を受けなければならない。

応急処置

家庭でとりあえずもとに戻す方法がある。少し熱めのタオルをふくれている部分に当て、上から軽くなでるように押さえる。湯ざましなどをふくませ、静かにさせて行うとより効果的である。うまくいけば、30分もしないで、グルグルと音をたて引っ込むことがある。しかし、これはあくまでも応急の処置で、戻った場合でも、必ず、小児科医か外科医を受診する。

ガラクトース血症

常染色体劣性遺伝による糖質代謝異常の病気である。

症状

哺乳力の低下、嘔吐、下痢、体重増加不良ののちに、肝臓のはれ、黄疸、低血糖などの症状や、知能の遅れ、白内障があらわれる。現在では検査法が充実し、重症化するケースはほとんどみられなくなった。

原因

本来、食物中の糖質は、腸管でブドウ糖、ガラクトース、果糖に分解され、体内に吸収されるが、この疾患では、ガラクトースをブドウ糖に変化させる酵素が欠損しているため、吸収されたガラクトースの分解がうまくいかず、血液中にガラクトースが蓄積されてしまう。

検査と治療

マススクリーニング検査による早期発見が何よりも大切である。治療は食事療法がとられる。母乳や一般のミルクは、それに含まれている糖質がブドウ糖とガラクトースに分解されて腸から吸収されるため、ガラクトースを含まない特殊調整粉乳を使用するようにする。これを生後1ヶ月以内に使用しはじめれば、正常に発育する。

先天性の心疾患

先天的に心臓の一部に欠損や奇形のあるもの、あるいは心臓に直接関係のある血管に異常のあるものをいう。代表的なものに心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、肺動脈狭窄症、ファロー四散症などがあり、心室中隔欠損症が最も多くみられる。

症状

異常の程度によってさまざまである。ふつうは、呼吸が速く、苦しそうで、肩で息をしたり、小鼻をピタピタさせる。また、哺乳に時間がかかる、飲む量が少ない、機嫌が悪い、体重の増え方が少ないなどの症状に加えて、チアノーゼを起こすこともある。

しかし、これらの症状がみられず、ふつうの赤ちゃんとほとんど変わらない場合もある。幼児や学童期では、顔や手、足にむくみがみられたり、走ったり階段を上り下りすると、呼吸が苦しくなり、しそんきよやがみ込んだりする(蹲踞姿勢)。

原因

心室中隔欠損症は、左心室と右心室を隔てている壁(心室中隔)に穴があいていて、左心室の血液が右心室や肺動脈に流れ込む病病気である。

心房中隔欠損症の場合には、心房中隔に穴があき、左心房の血液が右心房に流れ込んでしまう。動脈管開存症は、本来、生後まもなく閉鎖すべき動脈管が閉じないため、血液が大動脈から肺動脈へ流れて、心臓に負担がかかるもので、乳幼児期では心不全を起こす。肺動脈狭窄症は、肺動脈や肺動脈弁が狭くなっているもの。
軽症では、心雑音のみでほかの症状はなく、発育は正常の場合もある。ファロー四微症では、心室中隔欠損症と肺動脈狭窄症に加えて、左右両室にまたがった大動脈が右に片寄る右方転位、右心室肥大などの4つの異常がみられる。激しく泣いたあと、哺乳後、排便後などに意識の消失やひきつけのような発作がみられる。幼児期に手術が必要である。

診断

心臓の雑音、チアノーゼの有無、心電図、心エコー、心カテーテルなどで診断する。大切なのは、早期から定期的に専門医の診察を受けることである。医療技術が進歩している現在では、かなりの重症でも手術により回復する場合が多い。

生活上の注意

軽症の場合はふつうに生活させてよいが、重症の場合は医師の指導を受け、とくに次の点に注意する。乳児期は哺乳力がふつうなら、なるベく母乳を飲ませ、かぜや発熱に注意するとともに疲れさせないようにする。

園児や学童の場合は、運動量を主治医に決定してもらう。また、虫歯の治療や抜歯のさいに細菌に感染し、心内膜炎を起こすことがあるので、歯科医と小児科医に病状を伝えて治療を受ける。