脳炎は代表的な神経系の感染症で、ともに細菌やウィルスが原因となって脳に炎症を起こす。現在では珍しい病気のひとつだが、一般に流行性で感染力が強く、特効のある治療法がないため、精神障害や知能低下などの後遺症が残る恐ろしい病気である。
症状
感染から発病までの潜伏期間はウィルスや細菌の種類によって異なり、そのほとんどは1週間から1ヶ月で発病する。しかしなかにはスローウイルス性脳炎と呼ばれる進行がゆるやかな脳炎もあり、その場合、発病までに数ヶ月間もかかることがある。
症状としては、突然の発熱に頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどを伴うのが一般的で、ときには腹痛や下痢などの症状を訴えることもある。
日本脳炎の場合、突然、39~40度の高熱に襲われ、同時に強い頗痛やめまいを感じる。また食欲がなくなり吐きけをもよおすこともある。体温は2~3日で40前後まで上昇し、それが10日間ほど続いたのち、しだいに熱が下かる。この間、患者は意識がもうろうとなり、うわごとをいったいり、手足をバタバタさせたりする。
そして重症の場合には、意識が混濁したまま死に至ることもある。脳炎は脳に障害が起きる病気だけに、感染した人に重い後遺症を残す。代表的な後遺症には、精神障害や知能低下、言語障害、筋強直などのほか、全身の動作が遅くなり、手の指にふるえがくるパーキンソン症候群などがある。
原因
脳炎の種類には、日本脳炎のほか、エコノモ脳炎、ヘルペス脳炎、遅発性ウィルス脳炎などさまざまなものがある。原因としては、コガタアカイエカによって媒介される日本脳炎のように、ウィルス性のものが一般的だが、なかには細菌やウィルスなどとは関係なくアレルギーや自己免疫の異常によって起きるものもある。また結核や梅毒などによって脳炎を起こすこともあるので注意が必要だ。
なお、一般に10歳以下の子どもが発病することが多いが、大人がかかることもあり、その場合、死亡率は子どもに比べて高くなる。
診断と治療
診断には、X線CTやMRI 、脳波、脳脊髄液などの検査が行われる。治僚には入院が必要。ヘルペス脳炎の場合は、近年、このウィルスに有効とされる抗ウイルス薬(アシクロビル)が開発されたが、必ずしも予後はよいとはいえない。そのほかの脳炎の場合も確実な治療方ではなく、症状や後遺症を抑える対処療法が中心となる。
予防
日本脳炎の予防としてはなんといっても予防注射を受けることが一番。ただし、1回めの注射では個かが出るまでに1ヶ月かかるので、日本脳炎が流行しやすい7月に備えて5~6月ごろに受けるのがいい。