2015年 3月 の投稿一覧

慢性腹膜炎

慢性腹膜炎には結核性腹膜炎、癒着性腹膜炎(腹腔内癒着)などがある。

結核性腹膜炎

症状と原因

結核菌の感染によって起こる腹膜炎だが、はじめから腹膜に起こることはまれである。ふつうは肺結核、結核性胸膜炎、腸結核などの結核症が原因となっている。
結核菌は菌が血管やリンパ管を通って移動するため、腹膜に達すると考えられている。肺結核や腸結核などの合併症であれば、それらの症状が全面に出るが、一般に発病・経過ともゆるやかで、腹痛、微熱、寝汗などの症状のほかに、おなかが張るなどの不定症状がある。病型的にみると、著しく腹水がたまっている滲出型、すぐに癒着してあまり動かないしこりがでできて腸狭窄や鼓腸のため腹部にふくらみがみられる乾性型、癒着の中心部にチーズに似た黄白色の膿汁が認められる乾酪型に分けられる。

検査と診断

これといった特有の症状がないため、診断は容易ではなく、結核の既往歴や前記の症状を参考に、腹腔鏡検査、腹水検査などが行なわれる。腹部のⅩ線写真やツベルクリン反応の結果なども診断の手がかりになる。

治療

原則的に抗結核剤を中心とした内科的治療を行うが、安静にしてバランスよく栄養をとることも重要。予後は病気の型によって異なってくる。
滲出型は抗結核剤によく反応し、予後も良好で、乾性型は腸狭窄症状などがあらわれれば、開腹手術によってくっついたところをはがしたり、腸をつなぎ合わせたりするが、ふつうは慢性の経過をとる。乾酪型は内科的治療が原則だが、急性の腹膜炎を併発した場合などは、手術することもある。

癒着性腹膜炎

開腹手術のあとや腹膜の損傷、出血、腹腔内炎症などにより、血漿のなかの線維素という成分が出て、腸管などが癒着したのが癒着性腹膜炎である。癒着は炎症が広がることを防止するなどの腹膜の重要な機能のひとつだが、この働きがよくない場合、腸狭窄や癒着性腸閉塞などの病気の誘因となる可能性もある。
癒着だけでは無症状の場合が多いが、腸管に通過障害が起こると、腹痛、便通の異常、吐きけ、嘔吐などの消化器異常に加え、おなかが張った感じがする。また、腹部がかたく、しこりが感じられる場合もある。癒着の程度、範囲、合併症などにより、症状がいろいろ変わることが多い。腸閉塞や腸狭窄であれば開腹手術が必要だが、原則として内科的治療を行う。

寄生虫病

日本でみられるおもな寄生虫病には、次のようなものがある。回虫症寄生虫のなかでは最もよく知られているもののひとつである。
回虫の体長は20~35cmで、乳白色から淡紅色をしている。人体→糞便→野菜類→人体という感染経路をもち、人体に入ると腹痛や下痢などの胃腸症状をもたらすことが多い。
また入り込んだ内臓によっては、眼症状や神経症状、循環器症状があらわれるほか、肺炎や腸閉塞などを引き起こすこともある。

回虫の有無は検便で簡単に判明し、治療には駆虫剤がおもに用いられる。

蟯虫症

虫は乳白色で体長数ミリら数センチの紡錘形をしている。成虫は盲腸とその周辺に寄生し、夜寝ると肛門のまわりに出てきて産卵するという特徴がある。
そして卵は手を介したり空気中のチリとなって、再び口から人体内に入る。おもな症状は腹痛とリンパ節の炎症、肛門周辺のかゆみ、かゆみによる睡眠障害など。
診断にはセロテープを肛門に貼りつけるセロテープ肛囲検査法が用いられ、テープに卵が付着しているかどうかで診断する。治療には駆虫剤が用いられる。しかしそれ以上に集団駆虫や衛生知識の徹底などの予防が重要である。

条虫症

一般にはサナダムシの名で知られている寄生虫で、いくつかの種類に分けられる。なかでも広節裂頭条虫や有絢条虫、無鈎条虫などが知られているが、これらの条虫の体長は数メートルを超える。鮭や牛、豚などに幼虫が寄生し、幼虫のついている肉を生や加熱不十分のまま食べたりしたときに人体に入り、そこで成長する。
症状は腹痛や下痢のほか、飢餓感や多食、体重減少、貧血などで、有鈎条虫の幼虫が脳や筋肉組織に入り込むと、その場所に応じたさまざまな症状があらわれる。診断は検便によって行われ、治療には駆虫剤の服用と貧血の対症療法が行われる。

鉤虫症

絢虫の体長は1cm前後のものが多く、種類によって多少の違いがある。小腸に寄生して血液や体液を養分として摂取する寄生虫で、糞便とともに排泄された卵が野菜類などを通して人体に戻ってくる。
また種類によっては幼虫が皮膚から人体に侵入することがある。
おもな症状は下痢、腹痛、嘔吐などの消化器症状で、ときに鉄欠乏性貧血や毛髪や土などを食べる異味症、めまいなどがあらわれることがある。
検便によって診断し、各種鉤虫駆虫剤の服用や貧血に対する治療が行われる。

吸虫症

肺ジストマ、肝ジストマ、横川吸虫症日本す血吸虫症ななどさまざまな病気を引き起こす寄生虫で、そのほとんどの種類が糞便→水中カワニナなどの貝類→ モズタガニや鯉など淡水業→人間という経路をとる。

ただ日本住血吸虫は水中でミヤイリガイに寄生し、その後、水中に入った人間の皮膚を食い破って体内に侵入する。症状は、肺ジストマではせきと血たんがあらわれ、放置すれば胸膜炎や膿胸などを引き起こす。

また肝ジストマでは茸痘があらわれたり肝内結石ができるほか、そのままにしておけば肝硬変にまで進む。横川吸虫症は下痢や血便、腹痛などがおもな症状。

日本住血吸虫症では感染初期に感染箇所のかゆみがあらわれ、次いで下痢や腹痛などの胃腸症状、発熱、肝肥大、門脈亢進症などがあらわれる。
そして、さらに肝硬変まで進み、死亡するケースも少なくない。診断は検便のほか、必要に応じて皮内反応検査を行う。治療は駆虫剤の服用と対症療法を行う。

包虫症

成虫が寄生するキツネやオオカミ、犬などの糞便に卵が排泄され、それが人体に入って成長する。キタキツネなどを媒介として、北海道東部に発生することが多い。症状は寄生する場所によって異なるが、肝臓や肺、脳、まぶた腫瘤とそれに伴う諸症状があらわれるケースが多い。

アニサキス症

もともとはクジラなどす海に棲む晴乳類の胃壁に寄生する回虫の一種である。人体へは中間宿主であるイカ、サバ、アジなどを介して感染し、胃腸に寄生する。症状としては上腹部を中心とした激痛かよく知られるほか、下襟や、急性腹痛、胃腫瘍の症状があらわれる。胃の内視鏡検査で見つかることが多く、そのときに駆除する。

フィラリア症

(蚊などが人間の血を吸うさいに、血液中の幼虫が一緒に吸い出され、それが蚊によって再び人体に侵入する。成虫による反応性炎症と、足の皮膚の肥厚など象皮病に似た症状が、おもな症状である。その症状によってある程度、診断の見当はつくが、夜間の血液中にいる幼虫の存在が決め手となる。

腸憩室

腸管の一部が袋のようにふくらんものを腸憩室という。食道や胃、腸など消化管には先天的、または後天的な憩室が数多くあり、多くの場合、それによって何かの症状があらわれるということはない。ただ、ときには出血や炎症を起こしたり、腸閉塞の原因となることがある。

  • 十二指腸憩室
    小腸の憩室としては最も一般的なもので、とくに十二指腸下部に多くみられる。数はひとつだけのことが多いが、ときには複数の憩室ができることもあり、その大きさもさまざまである。ほとんどの場合、症状はあらわれないが、憩室ができる原因として胆のう炎胆石症膵炎などの疾病があげられている。
  • 小腸(空腸・回腸)憩室
    十二指腸以外の小腸の憩室ができることはきわめてまれ。またできても病気の原因となることは少ない。ただ憩室内に細菌が繁殖すると、吸収不良症候群を起こすことがある。
  • メッケル憩室
    小腸の下のほうにある回腸末端にできる特殊な憩室である。これは出産までに胎児と母胎を結んでいた卵黄管が出産後も残ったもので、ときに腸閉塞の原因となったり、虫垂炎とよく似た症状を起こすことがある。
  • 大腸憩室
    大腸内部の圧力が高まって、周囲の腸壁の筋層が弱く、血管が出入りしている部分が押し出されてできる。日本人は大腸の右側にできることが多く、欧米人は左側にできることが多いのが特徴だが、最近では食生活の洋風化などで日本人でも左側にできることが多くなった。
    また大腸の左右に、いくつもの憩室ができる傾向も強まっている。右側にできる憩室はこれといった症状のないことが多いが、左側の憩室は出血をまねいたり、憩室周囲炎の原因となったりする。

治療

憩室が見つかったからといって心配する必要はなく、基本的にはそのまま放置しておいても問題はない。下血や腹痛、発熱などの症状があらわれたら、安静にして対症僚法を受ける。なおⅩ線検査では憩室と確定できない場合は、大腸内視鏡検査が行われる。ポリープだった場合は、同時に内視鏡的切除が行なわれる。