アルコール性肝障害

長期間、大量の飲酒によって肝臓に障害が生じるのがアルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変といったアルコール性肝障害である。

症状と治療

アルコール性脂肪は、肝臓に脂肪がたまり、肝臓が肋骨の下に大きくはれてくる。肝臓を押したときに痛みを感じたり、だるさを感じるようになる。
治療法としては入院して安静を保ち、たんばく質を十分に摂取する。もちろん飲酒は厳禁である。

  • アルコール性肝炎
    大量の酒を飲んだことをきっかけに起きることが多く黄痘や腹水、腹痛などの症状が出る。きわめて重い状態になることがあり、治療には禁酒と安静が必要である。
  • アルコール性肝硬変
    大量の酒を長期間にわたって飲んでいる人がなりやすい。症状はウイルス性の肝硬変と同じだが、禁酒、安静、高栄養によって肝臓の機能はかなり回復する。

原因

いうまでもなく酒の飲みすぎが原因であるが、酒好きの人がこれらの病気になるには、2つの理由が考えられる。ひとつはアルコール自体が肝臓に対して有害なことであり、もうひとつは酒好きの人には栄養的に片寄った食事をする傾向がある点である。とくにたんばく質不足は肝臓に悪影響を与えるので注意したい。

生活の注意

禁酒がすべてに優先する。

肝硬変

症状と経過

初期には食欲不振や腹部が張るといった症状があるが、一般にはこれといった自覚症状を訴えないことが多い。しかし、次第に手のひらが赤っぽくなり、皮膚が黒ずんでくる。
男性では、女性化乳房が起こることもある。進行にともなって、歯ぐきからの出血や鼻血、貧血、黄疸、下肢のむくみ、腹水などがあらわれる。さらに進行すると、星夜の区別や生年月日がわからなくなる肝性脳症が起こり、昏睡に陥ることもある。

また腹壁の静脈が怒張し、食道静脈熔の破裂のために大量吐血して、緊急治療が必要になるケースもある。

原因

原因としては慢性肝炎やアルコール、脂肪肝、寄生虫(日本住血吸虫)、先天性代謝異常などがあげられる。日本ではC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎が最も多く、ついでB型肝炎ウイルス、アルコールの順となっている。A型肝炎から肝硬変になることはない。なお、最近では遺伝子レベルでの原因の解明も進められている。

検査

血液による肝機能検査のほか、超音波検査、X線、CTなどの画像診断が行われるが、確定診断のためには腹部から著説肝臓を観察する腹腔鏡検査や肝生検も行われる。

治療

重要なのは生活の注意と食事療法である。食事は薄味にして、たんばく質を十分にとり、食後1時間~1時間半は安静が基本。疲れは禁物なので過労を避け、禁酒を守る。黄痘や腹水がみられない軽度の場合なら、医師の指示のもとに生活と食事の注意を守っていれば、ほぼ通常の生活を送ることができる。
薬物療法では、消化剤、肝庇護剤、利尿剤、アンモニア値を下げる薬を服用する。利尿剤で腹水がひかないときは、腹部に針を刺して腹水を抜いたり、また食道静脈痛からの出血の危険が場合は、硬化療法、結染僚法などが行われる。出血は死亡につながるので、吐血したら一刻も早く病院に運び、緊急治療を受ける必要がある。

更年期障害

更年期の女性にみられる心身の障害を総称して更年期障害といい、頭痛や倦怠感、のぼせ、肩こりなどのさまざまな症状があらわれる。

症状

倦怠感や頭痛、肩こり、腰痛、動悸などのほか、顔面紅潮やのばせ、もの忘れ、不眠など、症状のあらわれ方はさまざまである。これらの症状は検査を受けても異常がはっきりとあらわれないことが多い、いわゆる不定愁訴である。
いずれの症状も、健康なときであれば何でもないようなトラブルが原因であらわれ、数日間続くといつのまにか治るというパターンが多い。
これが1~2か月の間隔をおいて繰り返してあらわれ、しだいに症状の出ている期間が長くなる。そして5年聞くらい、こうした状態が続いたあと、自然に治ってしまうのがふつうである。

原因

はっきりとした原因はわかっていないが、閉経の時期をはさんで起こることから、卵巣機能の衰退、間脳や脳下垂体の異常などが原因と考えられている。
また年齢的に夫婦間や親子間などの家庭内での悩みや、対外的な悩みの多い時期であり、そうした精神的ストレスが原因になるともいわれている。

治療

卵巣機能の衰退が大きな傾国と考えられるため、これまでは卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン) を用いることが多かった。しかし、子宮内膜がんや孔がんの発生を高める恐れがあるため、現在ではプロゲステロン(黄体ホルモン) をエストロゲンと併用することにより子宮内膜がんの発生を抑制する治療法が広く行われている。
ただしホルモン補充僚法は、検査を受けながら行う必要がある。また、このホルモン剤による治療のほかに、精神安定剤や漢方薬の使用など、それぞれの症状に応じた対症療法が行われることもある。

生活上の注意

更年期障害は、全身の検査で異常が発見されなければ、必ず治る病気である。また本人の精神状態や性格、周囲の環境などによって症状や経過が左右されるので、本人が積極的に生活を改善することが大切である。

スポーツをしたり同好会に入ったりして、生活のリズムを変えてみることがよい効果を生むことが多い。そして周囲の人間も温かく見守るようにして、そうした環境をつくりあげるようにしたい。
なお更年期は、高血圧や心臓病、がんといった成人病のほか、うつ病や初老期の痴呆など精神的な疾患があらわれてくる時期でもある。
これらの病気は何げない自覚症状が早期発見の決め手になることが多い。したがって素人判断で自分が更年期障害であると決めつけ、市販薬や民間療法だけで治そうとすると、これらの症状を見過ごすことにもなりかねない。油断をせずに医師の診察を受けることが大切である。
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劇症肝炎

急性肝炎の経過中、症状があらわれてから8週間以内に強い肝機能障害に基づく脳症(傾眠・錯乱・譫妄・異常行動など)をはじめとする急性肝不全症状(黄疸・出血傾向など)が出現する。
また、血液が凝固するまでの時間をあらわすプロトロンビン時間(PT)検査の値が40%以下を示す場合を劇症肝炎という。

発病10日以内に脳症が出現する急性型と、それ以後に出現する亜急性型とがある。死亡率が80~90% と高く、運よく回復しても肝硬変になることが多い、たいへん恐ろしい病気である。

症状

劇症肝炎は、自覚症状がきわめて強いこと、激しい茸痘と著しい肝障害、神経症状があらわれることによって判断できる。とくに、黄疸が出てから1週間たっても強い倦怠感、食欲不振、吐き気、ガンコな頭痛、不眠などがある場合には劇症肝炎を疑ってみるべき。また発熱や筋肉痛、関節痛、腰痛などの全身柱状かある場合や、甘ずっぱい肝性口臭かある場合も注意か必要。

経過としては、黄痘がだんだん強くなり、そのうち精神異常があらわれて昏睡に陥る。この状態を肝性昏睡といい、肝臓の解毒作用が不安定なために起こる。
肝性昏睡はかなり特徴的で、劇症肝炎の重体度の指標となる。はじめは睡眠のリズムが逆転し、夜に眠れなくて星間寝たがり、性格が変わって投げやりになる、抑うつ状態になるなどの症状があらわれる。
この時期には肝性昏睡と判断できないことも多いが、しだいに日にちや場所を間違う、簡単な計算ができない、金銭をばらまく、大事なものを捨てるなどの異常行動を示し、そのうち鳥の羽ばたきに似た手の大きなふるえ(羽ばたき振戦があらわれ、外界の刺激に応じられなくなったり、眠ったような嗜眠状態となり、ついには意識が完全に消失する。

治療

劇症肝炎は、発病して1週間から10日間で80% が昏睡状態に陥ってしまうように、致命率がきわめて高い。

発病が疑われたら、できるだけ早期に適切な処置をすることが必要である。肝性昏睡の治療としては、交換輸血、人工肝補肋装置の使用、ステロイド(副腎皮質ホルモン)療法、グルカゴンインスリン療法、血漿交感などが行われている。

慢性肝炎

明らかに肝炎の急性期の症状が認められたケースで、発症から6ヶ月以上を経て、なお肝障害(GOT/GPTが持続的に高値を示すこと) が認められる場合、または肝生検による組織所見で確認された場合は、慢性肝炎と診断されている。

急激に悪化したり活動性が強くなる時期もあるが、一般には肝細胞の壊れ方が急性肝炎のように急激ではないため、少しずつ肝細胞が破壊される一方で肝臓の自己再生能力が細胞を修復するという、安定したかたちをとる。
したがって多くの場合、病気という自覚がもちにくいのが実情だ。実際、慢性肝炎の多くは、40~50歳になってかぜと思って受診したときや健康診断を受けたときに偶然、発見されている。

症状

肝炎が慢性化すると、黄疸はあまりはっきりとはあらわれない。しかし、激しい運動や飲酒などをして肝臓に負担をかけると、尿が濃く、泡まで黄色くなったり、肌がうっすらと歩黄色みを帯びてくる。
熱や腹痛、お腹が張るなどの症状あらわれることも少なくない。悪化ると疲れやだるさ、食欲不振、吐き気などを感じる。こうした症状は日常な疲れやかぜと間違いやすいため、逃してしまうと症状を悪化させるこになる。注意が必要。

原因

急性肝炎の場合、ウイルスに感染して通常、2~3ヶ月経過すると体外に排出れ、肝臓の機能は回復する。しかしときには回復期に無理をしたりして病気が治りきらずに慢性化することがる。
これが急性肝炎から慢性肝炎にる多くのパターンである。もうひとつの慢性肝炎のパターン急性肝炎のように症状が急激に出なで、ゆるやかに一進一退を繰り返しがら病状が悪化していくというものある。
ウイルス性の急性肝炎から慢性肝に移行するケースは、A型肝炎にはとんどみられず、B型、C型に多いなかでもC型肝炎は慢性肝炎になる率が高く、急性C型肝炎にかかった♪慢性化しないように十分注意したい。

肝硬変への移行

慢性肝炎それ自で生命を落とすことはないが、怖いはそれが徐々に進行すると慢性肝炎ら肝硬変に移行することである。肝硬変になると肝細胞の破壊が著しく、完全に治すことができなくなってしまう。また肝硬変になると肝臓がんを併発する確率も高くなってしまう点も、慢性肝炎の危険なところ。

診断

診断には急性肝炎と同じく血清トランスアミナーゼ値(GOT/GPT)検査が利用される。いずれの数値も急性肝炎では500~1000以上に達するが、回復とともにその数値は下がり、やがて正常値の40以下に落ち着く。
しかし慢性肝炎に移行すると100~200前後の異常値が長期間持続する。

黄疸は症状が急激に悪化するとき以外は、はっきりとあらわれることはない。したがって黄疸が出ないからといって安心することはできない。

ただし慢性肝炎といってもその症状にはいろいろあり、症状が軽いものから肝硬変に近い重症のものまで、また病変が静止しているものや、活動的で広がりつつあるものもある。そのため、病状の把掘や予後の判断の材料として、肝硬変検査は何度も繰り返さなければならない。また肝硬変の進展を予測したり、治療方針を決定するために、肝生検や腹腔鏡検査が行われる。

治療

基本的には急性肝炎と同じで、安静と薬、食事による治療が行われる。ただし慢性肝炎の場合、病状が落ち着いているケースから重症で急性肝炎のような症状を示すケースまで、患者によって症状に開きがあるため、病状に応じた治療が必要となる。また、慢性肝炎は経過が長く、肝硬変に進展しなければ致命的菜疾患ではないので、症状の許す限り積極的に社会復帰をはかり、健康な人に近い生活をするようつとめることが必要。

現在では、慢性肝炎が将来どのようになるかは検査すればかなり予測できるので、専門家に相談し、どの程度、社会活動が可能かを判断してもらうことが大切。薬物治境では、インターフェロンの注射、強力ネオミノファーゲンCの静注、そして漢方薬の服用が行われる。B型慢性肝炎の場合はインターフェロンと副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤が併用される。

慢性肝炎患者の生活の注意

判定基準 検査と治療
生活
日常生活 食事
肝組織で非活動性の所見を示す場合
GOT/GPTは150KU以下で推移する場合
月1回程度の定期的な外来通院が必要。自覚症状が乏しい場合は、GOTO/GPTの変動にあまりこだわらずに積極的に社会復帰をすすめる
過労を避け、平常勤務(重労働や不規則な連続勤務は避ける)食後30分前後、横になるのが望ましい。
高たんぱく食(1日に80~100g)をとる。脂肪、糖質をコントロールして標準体重を目標とする。ビタミン類を十分にとり、新鮮な野菜、果物をとる。禁酒。
肝組織で活動性の所見を示す場合
自覚症状に乏しくGOTO、GPT150KU前後の場合は外来通院
軽勤務
上記に準ずる腹水が認めら耽る場合は塩分を制限する
GOT/GPT 150KU以上その他の肝機能の異常が強い場合や肝硬変への進展傾向が見られる場合は入院。またあ自宅で安静
社会復帰は症状が安定してから
上記に準ずる腹水が認めら耽る場合は塩分を制限する
黄疸、食欲不振、全身倦怠などの自覚症状がありGOT/GPTが300KU以上の場合
入院。急性肝炎の治療に準ずる
安静にして寝ている
脂肪を減らし消化のよい食事をとり、食欲の増進につとめる

急性肝炎

急性肝炎のほとんどは肝炎ウイルスの感池爪によって発症する。ウイルス性肝炎はふつう一過性で、1~2ヶ月、長くとも半年で治る。これを急性肝炎という。

症状

特徴的な症状としては、黄疸、肝臓のはれ、右肋骨下(右季肋部) の不快感、吐き気、著しい倦怠感、食欲不振、褐色尿などが挙げられる。
ただし、肝臓障害の代表的症状として知られている黄痘は、A型肝炎の過半数に、B型肝炎の8割にあらわれるが、C型肝炎では比較的少なく、3割ほどにしかみられない。
このほか、急性肝炎の特徴は比較的急激に発症することだ。2週間~6ヶ月間の潜伏期間を経て、38~39度の高熱を出し、頭痛や腹痛・下痢・吐き気などの消化管症状があらわれる。
そのため、かぜと勘違いすることが多い。その後、黄疸が比較的はっきりとあらわれ、この時点で肝炎とわかる。
一方、このような急激な発症のほかに、症状のあらわれ方が比較的ゆるやかな場合もある。この場合、38度以上の発熱は少なく、黄痘のあらわれ方も軽度である。

感染経路

A型肝炎ウイルスは、A型肝炎患者の糞便で汚染された飲食物や食器などを介して口から感染する。A型肝炎は経口伝染病だが、上下水道が整備され、水洗トイレが普及した日本では、大流行することはほとんどなくなった。

B型・C型肝炎ウイルスは、エイズと同じように血液や体液を介して感染する。輸血、ウイルスに汚染された注射器や注射針の使用、出産時の母子間感染、性交が感染の基本ルートといえるが、C型肝炎ウイルスは感染力がきわめて弱いため、性交や出産による感染はB型肝炎ウイルスに比べると少ない。
したがってC 型肝炎ウイルスの感染は輸血によるケースがほとんどで、感染者の大部分は、輸血用血液のスクリーニング体制がとられていなかった時代に輸血を受けた人である。また、使い捨ての注射針が使用される以前の予防接種なども関係があると考えられている。
現在では、輸血用血液を十分チェックしているので、輸血によるB型肝炎は激減、C型肝炎への安全度も高くなってきている。

A型肝炎とB型・C 型肝炎との違いには感染経路のほかに持続感染がある。持続感染とは感汎米しても発病せずに、長い年月、ウィルスをそのまま肝細胞や血液に宿している状態をさし、この状態の人を無症候性キャリアという。

B型肝炎の場合、出産時の母子間感染および免疫力の発達していない乳幼児期に感染すると、からだからウィルスを追い出すことができないため、キャリアに移行する。キャリアの80%は30歳ころまでに抗体ができ、健康な生活を送っているが、20% の人は20歳代で慢性化する。成人になってからの感染でキャリアになることはほとんどない。
しかし、C型肝炎では、成人の初発感染例の半数以上がキャリアに移行し、進行は遅いものの、ほとんどが慢性化する。

D型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルス感染者のみに感染する不完全ウイルスで、経口感染する。E型肝炎ウイルスとともに、現在のところ日本ではほとんどみられない。また、F型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスの変異形であることがわかっている。

経過

急性肝炎は褐色尿があらわれてから約1週間で黄痘がピークに達する(黄症がでない場合もある)。自覚症状が最もはっきりと出るのは黄症があらわれる前後の4~5日で、黄症がはっきり出るにしたがって自覚症状は軽くなる。
黄痘のピークが過ぎるころからウィルスに対抗する抗体が肝組織の修復を始め、しだいに倦怠感や食欲不振が解消される。茸症が消えるのはふつう4~6週間後だが、その時点ではまだ肝機能は完全には回復していない。

肝機能の完全な回復には早い場合で2~3ヶ月、遅い場合には4~6ヶ月ほどかかる。治ったと思ってこの期間に仕事に戻ったりすると、完治が長びくばかりか、慢性肝炎や肝硬変になることもあるので回復期の生活については医師のアドバイスを受けることが大切である。

慢性肝炎への移行

A型肝炎は一過性感染で、一度かかったら終生免疫を得て、もうかかることはない。

B型肝炎やC型肝炎は、10~20%% が慢性化する。とくにC型肝炎は、症状が軽いかわりに慢性化するケースが多い。輸血によってC型肝炎に感染した患者の約60~70% が慢性化するので、慎重に療養することが大切。
B型肝炎が慢性化するケースでは、無症候性キャリアが本人も気づかないほど軽い症状のまま慢性肝炎に移行する場合が多いといわれる。

診断

急性肝炎では血清トランスアミナーゼ(GOT・GPT)と血清総ビリルビン値が上昇する。これら肝機能検査による数値のほか、血液中の抗原(体内に侵入したウィルスまたはウィルスがつくり出すたんばく質や抗体(抗原を攻撃して組織を防衛するたんばく掌を調べて診断する。
ところで、C型肝炎ウイルスについては、その存在は確認されているのだが、ウイルス自体はまだ発見されていない。
C型と特定できるようになったのは、C型ウイルスの抗体(HCV抗体)が確定されたことによる。検査薬が開発され、平成元年から輸血用血液に対するスクリーニングも開始された。

治療

急性肝炎の治療法としては、薬物療法、安静療法、食事療法の3つが柱となる。

薬物療法

急性肝炎には特効薬はなく対症薬を用いる。
破壊された細胞の再生・修復に必要な栄養素を補給したり、肝細胞の働きの一部を肩代わりするための薬が使われる。もともと肝臓はきわめて強い再生能力をもっており、肝炎の治癒とともに肝炎ウィルスが消滅する。
安静療法薬以上に重要なのが安静である。安静といってもただじっとしていればよいというわけではなく、寝ていなければならない。
肝臓障害の場合、肝臓が本来もつ回復力を100%生かすことが治療法の中心であり、そのためには肝臓に十分な血液が流れる必要がある。
ところが立っていると、肝臓への血液の流量が横たわっているときに比べて40%も減少してしまい、肝臓の再生能力が十分に発揮できない。
ちなみに立って運動すると、肝臓への血液の量は寝ているときに比べて80%も減少してしまう。
安静期間については一概に言い切れないが、黄痕が出てから1週間ほどは安静を守るべきである。最近ではある程度、安静期間をおいても病状が改善しない場合には、少しずつ運動量を増やすようにしている。ただし起きて生活できるようになってからも、食後の1時間ほどはからだを梼にして肝臓に必要な血液がいくようにしたい。

食事療法

肝組織の再生能力を高めることが肝炎治療の目的である以上、それに必要なエネルギーと、栄養素を補給する食事療法は大きな比重を占めている。したがって、肝炎患者の食事は高エネルギー、高たんばく、高ビタミンが基本とななる。脂肪は無理にさける必要はないが、控えめにしたほうがよい。また、病気のピーク時には食欲不振や嘔吐などの症状が出るので、淡泊で消化のよいものをとるようにする。
たんばく質は破壊された肝細胞の再生に重要な栄養素で、必須アミノ酸を多く含んでいる牛肉や鶏肉、卵、牛乳、レバーなどは肝機能回復のためには最良の食品である。
たんばく質が組織再生の素材となるのに対し、糖質は組織再生のエネルギーとして活用される。糖質が不足すると、素材となるべきたんばく質がエネルギー源として利用されてしまうので、組織再生が進まなくなってしまう。
ビタミンでは、肝臓内の代謝活動をスムーズにするビタミンB類(B1、B2B6 など) が大切である。ただし、食事が十分に摂取できるときは、特別、大量に補給する必要はない。
一般に急性肝炎の患者は、回復期に入ると食欲が旺盛になる。そのう、ぺ治療の必要から運動をせずに高たんばく、高エネルギーのものを食べるので、肥満しがちである。体重のコントロールには十分注意したい。

予防

A型肝炎は経口感染のため、衛生状態のよい現在の日本で感染することは少ない。しかし東南アジアなどではいまだに流行しているので、これらの地域に旅行するさいには飲料水や食べ物に十分な注意が必要。そのような土地では、水質検査で安全とされている飲料水でも、必ず5分以上は沸騰させてから飲むようにしたい。
とくに20~30歳代の人には、外国で感染して日本で発病するケースが多い。海外旅行の前には必ずガンマグロブリンの予防接種を受けるようにしたい。
効果期間は6ヶ月だが、1回めの接種から3ヶ月後に再接種が必要である。

B型肝炎については、昭和四8年より輸血用血液のスクリーニングが行われるようになり、輸血により感染するケースは少なくなった。
母子間感染についても、昭和61年度からは妊婦にB型肝炎ウイルスの検査が義務づけられ、HBe抗原が確認された場合、生まれた子どもに高単位HBグロブリン(HBIG ) およびB型肝炎ワクチンの接種を行うことで、キャリアへの移行をほとんど防止できるようになった。
これらの予防接種は医療従事者やHBS抗原あるいはHBS抗体陰性者(B型ウイルスに対する免唆をもたない人) にも利用されている。このため、2~30年後には、B型肝炎患者はほとんどいなくなるだろうと予測されている。

B型・C型肝炎ウイルスの場合、感染に気づかないケースも少なくない。その場合、とくにB型は知らずに人にうつす危険もある。HBe抗原陽性者(B型肝炎ウイルスの構造の一部であるHBe抗原が多く血中にある状態の無症候性キャリア) の家族やこれから結婚しょうという人も一度は検査を受けおくとよい。

C型肝炎についても、平成元年から始まった輸血用血液のスクリーニングにより輸血後肝炎は激減した。予防ワクチンはまだ開発されていないため、現時点では血液汚染に対して注意する程度しかない。A 型、B 型、C 型肝炎ウイルスに共通した殺菌法としては、流水による洗浄、熱による滅菌、塩素系消毒剤の使用などが行われている。

A型・B型・C型肝炎の比較

  A型肝炎 B型肝炎 C型肝炎
感染から発病まで
流行性のものと散発性のものとがあり、糞便中のウイルスが、食器や食年勿などを介して口から感染する。輸血による感染はまれ。潜伏期問は15~45日、子どもや若年者に多い
散発性のものがおもで流行はまれ。輸血によって感染することもある。潜在期間は30~160日。すべての年齢に発症する。
散発性のものがおもで流行はまれ。ほとんどが輸血による感染である。潜在期間は15~180日。すべての年齢に発症する。
症状
急に発症するが、重症度は軽度~中程度。劇症化するのはきわめてまれ。慢性化することもあまりない
ゆるやかに発症するがときに重症化、ときおり慢性化する
多くはゆるやかに発症する。劇症化はわずかだが、半数以上が慢性化
診断
1、IGM-HA抗体測定 2、ペア血清(発症3~4週間以内と1~4ヶ月)でHA抗体上昇
発症時期にHBs抗原を検出
HCV抗体(第二世代)、HCV-RNA検出
予防
免疫グロブリン製剤による予防が有効
免疫グロブリン製剤による予防は初期に有効
不明

肝炎

肝炎は肝細胞が破壊され、肝臓に炎症を起こす病気で、ウィルス、アルコール、薬、免疫異常などが原因で起こる。日本ではウィルスとアルコールに起因する肝炎がほとんどで、80%をウイルス性が占め、アルコール性は増加傾向にあるものの、およそ20% である。

ウイルス性肝炎の原因となる肝炎ウイルスは、現在、A~G型の7種類が確認されている(かつて非A非B型といわれたもののほとんどがC型であることがわかった)。ウィルス学的にはそれぞれ違うウイルスだが、ウィルス自体が肝細胞を破壊するのではなく、ウィルスを除去しょうとする人体の免疫反応が肝細胞の壊死(破壊)を引き起こす。
そのため病状の経過は少し異なるものの、ウイルス抗原の種類に関係なく、病変は同じになるのである。

したがって、肝生検や肝機能検査のみでウイルスの種類を特定することはできず、血液検査が必要となる。原因による分け方とは別に、肝炎は病気の起こり方、症状によって、急性肝炎慢性肝炎にも分けられる。

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